南仏紀行-13 アヴィニヨン

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何処が入口だろうかと思う程続いた後、左に折れてレプュブリク門をくぐった。旧市街は一直線で法王庁の方へ続いている。今は冬の季節、芽吹き前の街路樹はキュビスムの絵画だ。(57頁)

 

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市役所前のロルロージュ広場には観覧車、細い通りに入って法王庁宮殿に出た。白い石造りの要塞のような建物が窪地になった空間から始まって奇妙な感じだ。青い空につながって金色のマリア像。(58頁)

 

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ブラッスリー・ル・シントラはジャン・ジョレス大通りに入って直ぐの左手にある。ガラス張りのカフェ・スペースから店内に入るとマハラジャに仕えるインド像のタペストリーが飾られたエキゾチックな内装。時間は一時過ぎ、飲み物を聞いて回るギャルソンは、要領が悪くて把握できないままテーブルクロスにオーダーを直接書きつける。(57頁)

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わたしの方もフランスの書店チェーンのフナックが途中にあったのをチェックしていたので覗いてみる。一階はCD、ビデオ、二階が書籍で、アートの棚でマン・レイを捜した。近年刊行の廉価版、画集や写真集が見つかると期待していたが、何も見つからない。それで、若い女性に尋ねてみたが、ダメだった。(58頁)

 

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 集合場所に指定されたロルロージュ広場をポプラがぐるりと囲む。今は風が強い季節なので椅子やテーブルはかたづけられている。やがて春が訪れると、人々は集まり身体と心を解き放って光を浴びるだろう。(61頁)

南仏紀行-12 アルル

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国旗が掲げられているのが市庁舎で、空はどこまでも青い。(48頁)

 

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一〇〇年の後、壁を黄色に塗って「光」を抹殺した観光地の名所は「カフェ・ヴァン・ゴーグ」と名乗ってわたしたちを迎え入れる。壁の黄色は過剰な演出、夜空に輝く星の光が地上に反射して明るく照らすといった昼夜にわたるサービスぶり、それもしかたないか。(54頁)

南仏紀行-11 サン・トロフィーム教会

2006年3月6日(月)

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ジョン・ジョレス通りを進んで革命広場へ。中世の石畳の上にオダリスクと噴水。四方に向かってライオン、モーゼの口からは清い水が落ちている。(48頁)

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右手にあるのは、正面のポルタイユ(装飾彫刻のある門)が素晴らしいサン・トロフィーム教会。扉を開けると老人が一人、ナルテックスからわたし達を奥へと導いてくれた。(48頁)

 

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聖堂内部に他の人影はなく、自然の光が側廊に満ち溢れ、信仰の重さが床の辺りに漂っている。ロマネスクとゴシックが混在するこの教会では、ステンドグラスの色 は控えめで、交差部の辺りでも光は本来の姿を留め、中世からの祈りの時間を封印している。(48頁)

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林哲夫著『日々スムース』

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18.8×13cm  pp.110 書誌よろず屋発行 限定500

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林画伯のブログ(sally-summus)の一部が書籍化された(2006年5月から2008年12月迄)。 氏のブログはNo.2となって現在も続けられているが、上桂から桂へお住まいを移された頃の多忙な様子、東京での活躍、楽しい京都、大阪、神戸の日々。古本好きには有益な情報満載で、今も色あせない。

 

 

 上梓されたので早速手に取ったところ、当時(15年程昔です)の思い出が蘇り、記憶を補正する行間で、休憩するのももどかしく、一気に最終頁まで走ってしまった。林ワールド満載。コロナ禍の自粛要請化では、夢のような人々との交流、飲み屋さんに、東京に出かけたくなりました(感謝)。

 

 

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 尚、本書は銀閣寺前の古書善行堂で取り扱っている。販売価格・税込1,000円。↓

健康散歩とお勉強

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小生、「姿勢良く、早く歩け」と家人に叱られてではありますが、自転車パトロールと降雨を除いて健康散歩5,000歩ノルマをこなす日々、── まあ、楽しくやっております。カメラ・パチリをたまに入れるのかコツですかな。

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 「マン・レイ受容史」本文原稿も、それなりに進んでおります。勉強しながらの「戦前編」はそろそろ終わりそう。

 

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南仏紀行-10 エクス・アン・プロヴァンス

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春を待つプラタナス並木は、枝だけの身でミラボー通りを奥深く連なっている、その先にはセザンヌの生家があるはずだ。(41頁)

 

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部屋のインテリアとしてセザンヌの複製画『エスタックと城のある眺望』が掛けられている。(42頁)

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 夜中の一時半頃、眼が覚め寝れなくなった。時差ボケの影響だろうか、瞼を閉じて睡魔の訪れを待つも、頭は冴えるばかりだ。カーテンの隙間から何度も外を見る。隣りのベットにはTの寝顔。六時を過ぎると明るくなり、空は強い知的な青に包まれた。その後、周りが薄くなって鳥がさえずり始める。朝なんだ。では先程の青色世界はなんだったのだろう、写真では再現出来ない。(44頁)

南仏紀行-9 アンジェ湾

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細長い広場の突き当たりには、濃い黄色に塗られた五階建ての美しい館、この最上階には晩年のマティスが住んでいた。画家が描いた室内風景の幾つかを思い出し、部屋からの眺めを想像する。(37頁)

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車に注意して砂浜側に渡ると、アンジュ湾の海岸線がはるか彼方まで続いている。人々は海を眺め、椰子の葉が風に揺れる。京都市美術館で昔見たラウル・デュフィの油彩『ニース、天使の入江の夕暮れ』(一九三二年)の世界だ。あの絵に惹かれたのは、視覚じゃなくて、身体に当たる潮風の香りにあったのだろう、しばらくして広場に戻ると、北側に陽が当たり、腰掛けてお茶や食事を楽しむ観光客。印象派の画家たちも何処かのテラスに居たのだと思うと、目の前の人達に混じってゆっくりしたくなった。(39頁)

 

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南仏紀行-8 ニース

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昼食の店は、一筋入った裏通りにある劇場を改造したビストロ・フェロ、 舞台に設えられた厨房が、豪華な幕の間から見える。連続した一幕劇の趣向だ。エデット・ピアフも出演した舞台、アール・デコの内装はヨーロッパ的で楽しい。ニース風サラダの後に運ばれた自慢のブイヤベースは、スープは少ないが、ムール貝や鮭等の魚介類がたっぷり入って美味い。(35頁)

南仏紀行-7 モナコ大聖堂

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バスは岩盤内の駐車場へ。エスカレーター、エレベーターと乗り継いで六〇メートル程の崖の上に出る。(33頁)

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海洋博物館前に置かれた玩具のような観光列車や深海探査艇も興味深いが、道なりに現れた白亜の大聖堂が素晴らしい。創建一八七五年のロマネスク・ビザンチン様式。中に入るとパイプオルガンと聖歌隊の歌声。(33頁)

 

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歴代の大公と共に王妃グレースも眠っている。ミモザの花で飾られたグレース・パトリシア。清楚でエレガントな彼女は『ダイヤルMを回せ』『裏窓』『泥棒成金』等のヒッチコック作品にも出演しているのでわたしにも近しい。フランス語がしゃべれずモナコの人々にうちとけるまで苦労したが一男二女をもうけて次第に公務も積極的に努めるようになったと云う。(33頁)

南仏紀行-6 エズ

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城として機能していた時代にも、この同じ景色が拡がっていたのだと思うと、ロマンを感じる。季節が早いので紺碧の海とはならないが、砂浜から沖合の島々まで、海の濃淡が五色、空も加えれば色と光のバリエーションは十色以上だろうか、こんな優しい青色の変化を見たことなかった。眼下にはフランス国旗をはためかせる洒落た建物シャトー・エズ。ジャン・コクトーの映画『美女と野獣』の舞台に使われたそうだ。(30頁)

 

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空き地に置かれたテーブルがレストランだったり、階段を上がるたびに視界の変わる新鮮さが楽しい。(30頁)

南仏紀行-5 カンヌ

2006年3月5日(日)

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目覚めると舗道が濡れている。部屋から見る南仏カンヌ郊外のジョンクエール通りに建つ家は赤い屋根に白い壁、フランス式窓で椰子の木が茂っている。しばらくすると一階部分に明かりが灯り、パジャマ姿のシルエットが浮かんだ。台所で朝食を準備しているようだ。(26頁)

 

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ホテル前の道路を車が行き交う、ここから、高速道路を超えて山側に四キロ程行けば、マン・レイが一九三六年頃、恋人のアドリエンヌやピカソ、エリュアール、ペンローズなどと夏休みを過ごした高原の町、ムージャンがあるはずだ。(27頁)

 

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裏通りには糸杉やライオンの彫刻が置かれた古い邸宅、ピンク色の庇が可愛い別のパン屋などがあった。 通りに出ると散歩している家人達に会う。(27頁)

庄司達展 at ギャラリー16

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岡崎のギャラリー16で庄司達の個展『<Discover Japan ?> 庄司達・コピーによる作品 1972』が開かれている(17日(土))まで。

 レジメによると「市販の絵はがきを拡大白黒コピー写真に伸ばしパネルに張る、その上に朱色の線を描き加える、対象の形を部分的になぞったり、図柄に関係なく枠組みしたものなど直線や曲線の朱色の線が画面に加えられているのである」「それは既存のものの認識のしかたをどこかクールに打ち破っていたり裏切っていたり……」寺町時代のギャラリー16で展示されたものだと云う。
 朱色の線はまさしく庄司が扱う布、絵葉書好きのわたしは「参った」と思った。72年なら、画廊に顔を出す前になる。発表当初に拝見していたら、どんな展開をわたしにもたらしたのだろうか? タイトル(撮影地など)を転記したくなってしまった。小生ブラパチでの新天地が開けるかもしれない(感謝)。

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『写真の中の赤い線シリーズ』21点

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「炎上するノートルダム大聖堂」から眼が離せなかった。

南仏紀行-4 スキポール空港

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機内の楽しみは食事の他に、家族や隣り合わせた客同士の世間話と思うが、個別に小さな画面を見ている人達は閉ざされたままである。(19頁)

 

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突然、地上の振動が身体に伝わってきた。十五時〇七分、アムステルダムスキポール空港に着陸。(20頁)

 

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ニースに向かう待合い室は一階で、向かい側のイタリア系らしき十五、六歳の娘達はジャージ姿。人々からは国内線利用の気安さを感じる。(22頁)