南仏紀行-34 ギャラリー1900-2000

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河岸から離れボナパルト通りを戻ると、ギャラリー一九〇〇--二〇〇〇は右手側ですぐに見つかった。ハンス・ベルメールの小展示をしているではないか。これは良いぞとうきうき。ポンピドゥー・センターでの展覧会と連動しているのだね。(149頁)

 

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フランスでは指先でひらひらと踊る形体から小さな案内状の類をパピヨンと呼ぶ。店舗は正面から覗くと左壁 に書棚、右側には陳列ケース。殺風景な印象だがオークションの下見会の会場とする為のあつらえなのだろう。入ると書棚の裏側にオッテルロー氏のデスク。穴蔵のようで不思議な空間だ。先客との話に夢中になっている。(151頁)

 

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インターネットでは商売をしているようだったが恐い。これで用意してきたマン・レイ資料探索のカードを総て使いきってしまった。雨は降り続く。(154頁)

南仏紀行-33 アラントン書店

f:id:manrayist:20210402103708j:plainマラケ河岸に出て造幣局、フランス学士院を通りすぎアラントンの店へ。ここの扉もロックされている。しばらくして開けてくれたので「マン・レイのカタログが有りますか」と尋ねた。豪華本の類について発言したら良かったのかもしれないが、どうも、勢いが失せてきた。この心の状態、出会いの魅力が薄れてしまう、本は何も無く、目の前に現れわたしの指先を愛撫することが無い。(148頁)

 

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二〇年前、この店でシュルレアリスム画廊版の『回転扉』とギャラリー二十世紀刊の『時間の外にいる女達のバラード』を拝見したのにな。今回は資金もなく一人だ。せめてもと、店の外見を写真に撮る。(149頁)

南仏紀行-32 マリオン・メイエ画廊

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マン・レイのアトリエを訪問した時に薔薇の花束を作ってもらった店は、この辺りだったなとブラブラ歩く。(147頁)

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随分と歩いてからギャルリー・マリオン・メイエを発見。外壁の塗装や正面のロゴ、入口上部の装飾等は変わっているようだ。あの時には、ここでマン・レイの写真『プリアポスの文鎮』を買い、ジュリエットに紹介された。店の奥でジュリエットをはさんだ記念写真を女主人が撮ってくれた。今、ウインドウにはデュシャンの画集等が積まれている。そして、入ろうとすると扉がロックされている。覗くと、すぐに地下へ降りる螺旋階段、前にもあったのだろうか。若い女性が客と話し込んでいる。しばらくして、わたしに気付き扉を開けてくれたが「マン・レイ・チームはグランパレのアート・フェアへ行っている」とそっけない。(148頁)

 

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南仏紀行-31 ニケーズ書店

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限られた時間で効率良く捜すのは難しい。偶然が作用する部分も多いだろう。それからセーヌ 通りを左に折れてサンジエルマン大通りへ。前述したホテル・マディソンの隣りにあるニケーズを覗く。この店はシュルレアリスム関係に強いと評判だったが代替わりをしてしまって、今は陽気な太めの青年が店番をしている。マン・レイについて尋ねるとベルフォンド版の『大人のアルファベット』を示す。本日、二冊目の登場だ。(146頁)

 

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この青年、二階の展示を観ていけと熱心に勧める、作家の案内状もくれるが、安物のアメリカン・ポップといった繪。彼が好きな物とわたしの好みは違う。ズレてしまうのはしかたがないことだ。(147頁)

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通りのプレートとミシュランの地図と合わせるが、すぐに判らなくなる。それで、ウロウロしていたら古書店マザリンのウインドウに一九七二年のパリ市立美術館で開催されたマン・レイ展のカタログがあるではないか。午前中に出会った一冊とどう違うかと気になり店内に入って手に取った。しかし、状態が悪い、展覧会を告知する新聞がおまけとして挟み込んであって楽しいのだが、すでに二部持っているし、上手くいかないものだ。(147頁)

 

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輸入取止め・国際郵便

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 パリ・京都往復ご苦労さま。 国際書留郵便 小型包装物 内容: 書籍 贈り物

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 3月8日に航空便で送ったスモールパケットが、「あて所に尋ねあたらず」と記されて京都まで戻ってきた。コロナ禍の影響を受け海外便の取扱が悲惨な状態になって久しかったのだが、ロックダウンも一旦終わり、動き出しているだろうと期待して、名古屋市美の『写真の都物語』展カタログをパリ在の友人に送った。問い合わせ検索で荷物の動きを確認していたところ、五日程かかってシャルル・ド・ゴール国際空港へ着いた後、「輸入取止め」扱い。友人に尋ねると、これが多いそうで、通関を抜けずにそのまま差出人のところへ戻してしまっていると云う。扱い量が増えると、「宛先」の確認などせずにそのまま「ポイ」だって。行方不明となるものも多いと聞く。追跡と保険の申請をせねばと思っていたところ、一ヶ月半後の4月30日に送り出したとの表示が現れほっとした。検索で動きを毎日確認、そして、拙宅に5月21日到着。関空とパリは凡そ9,600kmだから、その倍の長い旅。荷物もとんだ「骨折り損のくたびれ儲け」とにかく無事な姿でやれやれ。しかし、どうやって再送するか思案。

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シャルル・ド・ゴール国際空港  グーグル・ストリートビューから引用(以下同じ)

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京都

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 友人から「EMSだと順調に届くのではないか」とのアドバイスをもらい5月24日EMSで再送、31日には無事受け取ったとの知らせをもらった。EMSはクロノポスト社扱いだから、これが違うのだろうか? 『写真の都物語』の28,800kmの旅でした。履歴情報を貼付しておきますので、同じような仕置に合っている人は参考になさってください。お疲れ様です。

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パリ  

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 教訓、フランスに郵便を出すときはEMS、あちらから荷物を送ってもらう時はどうでしょう。今、古書店に展覧会資料を注文し到着待ちの状態なのですが、相手が知らせてくれた追跡番号、ヒットしないのよね(不安)、---これについては、また、報告します。  

夏越の祓『みなづき』by 仙太郎

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シニア二人の我が家では、仙太郎の甘い物をよく求める。6月は『みなづき』、お店では白、黒、抹茶 の三種類。それぞれういろう、黒糖、抹茶の生地に小豆かのこをのせて蒸し上げるそうで、三角の形は氷室の氷の結晶だそうです。小豆は魔除けとか。リーフにこんな記述が---

 「みなづき」を食べ、うっとうしい梅雨とわかれ、祇園囃子が聞こえるようになれば、京都はいよいよ本格的夏をむかえる。コンチキチン♪ コンチキチ♪

  六月に入ったばかりですが、氏神さまからは夏越の祓いの人形(ひとがた)も、穢れを祓い 無病息災を祈ります。今年も巡行は中止だそうですね(涙)

 

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南仏紀行-30 ロリエ書店

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通りを戻って、右に曲がりセーヌ通り偶数番地のリブレリ・ロリエの店へ。ここも深く美しい青色で塗られている。(144頁)

 

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左側のウインドウに飾られている六点はアンドレ・ブルトンの『シュルレアリスム第二宣言』(一九三〇年)を中心に『シュルレアリスム革命』創刊号、ダリの『ナルシスの変貌』、『言葉の効用』誌が二冊、ベルギーのシュルレアリスム機関誌。この内の五点は山中散生の『シュルレアリスム資料と回想』(美術出版社、一九七一年刊)で紹介されている。店内に入ろうとすると閉まっている。困ったと思っていると、後から来た女性がドンドンと扉を叩く。すると、中から若い男が出てきて女性を招き入れた。それで、一緒にすっと店内へ。

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フランスの正統派古書店の品揃えは、びっくりするような珍品が完璧な美本でそろえられているけど、仮とじ本の印刷されたままの状態が好きなわたしなどは、格の下がる顧客の扱いとなるのだろう。(146頁)

南仏紀行-29 ラ・シャンブル・クレール書店

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地図では、サン・シュルピス通りが細くなった先にラ・シャンブル・クレールと云う写真集専門の古書店がある。この店で一九九〇年代前半にギャラリー・オクタンの『マン・レイ 裸体』やギャラリー・アラン・パヴォーの『マン・レイ 街の正面から裏側まで』等を購入した。それはインターネットが普及する前の時代で、在庫目録の依頼と注文で手紙のやり取りを随分と行った。当時は注文から現物の到着までに一ヶ月は必要だった。(140頁)

 

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東隣りも古書店で、こらの方はオフホワイトで塗られている。中央のガラス扉を挟んで左右のウインドウにディスプレイされた書物。店名の下に「高価買入鑑定」と金文字で書いてある。大きなテーブルに中年の女性が一人、アーチ型の木製梁が中央を走り、ちょっとしたサロンの雰囲気。念のためにと店内に入りマン・レイの在庫を尋ねる。若い男性が現れ対応してくれた。ベルフォンドの『大人のアルファベット』を示されたが、既に持っていると伝える。これならどうだと、店の奥から出してきたのは『ファシール』、これは一九六〇年代にメルシェールが装幀した美本で、舞い上がる軽やかなヌーシュの裸体を捉えたソラリゼのオリジナル写真が本に綴じ込まれている。これにはマン・レイのサインが入っているのだが、つい「これはヴィンテージでは無い」と口走ってしまった。それで持っていた名古屋市美術館での『我が愛しのマン・レイ』展のカタログをとりだし、コレクションしているわたしの写真との違いを説明する。買わない者が稀覯本を手にするのは申し訳ないが、無理にお願いして限定番号を確認すると、H・C版だった。(142頁)

南仏紀行-28 フェルー街

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わたし達はサン・シュルピス教会のある界隈へ到着した。マン・レイが一九五一年にカリフォルニアから戻り、亡くなる迄の二四年間を過ごした最後のアトリエは、教会を越したフェルー 街にある。(137頁)

 

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 マン・レイの未亡人ジュリエットが健在だった一九八二年六月、彼女に誘われアトリエを訪問した。(138頁)

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今、目の前にあるアトリエの扉は黒く塗られ、真鍮の真新しいドアノブが取り付けられている。右の壁には暗唱番号を打ち込むキーがあって、カバーには「ROSWITHA」と黒い文字。右の壁には青ベタ白ヌキで「2bis」の表示。その色は攻撃的でわたしが旅行中に求め始めた深みとは異質のものである。(139頁)

 

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ガレージの扉越しに見上げるアトリエの窓、隣家との境界部分にも手入れがしてある。アトリエの前に立ち、幾枚もの記念写真を撮る。(139頁)

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ジュリエットが一九九一年に亡くなるとアトリエにあったマン・レイの品々は競売に掛けられ世界中の様々な場所へ散らばってしまった。(138頁)

 

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この場所を描いたマン・レイの有名な油彩の構図で写真を撮りたいと思ったが我慢する。謎を載せた荷車を引っぱりアトリエに戻ってくる人物が必要だからな。扉の右側には単車が停められているが、前回には駐車する車が通りをふさいでいて、油彩とは隔たった光景だった、あの時にあったのはヤーンの単車だった。(140頁) 

南仏紀行-27 ノートルダム大聖堂

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正面の浮き彫りを確認する間もなく、人混みに連れられ聖女アンナの門から内部へ。近年の清掃工事で長年の汚れが落ち、見違えるように白くなった外見と内陣の暗闇、その中でゆれるロウソクの炎が心にしみる。(136頁)

 

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南側廊を進んで西の薔薇窓を振り返る、南の薔薇窓も同様に奇麗だ。フラッシュ撮影の光が幾つも飛んでいるので、翼廊のところで焚いてしまった。キリスト教世界を視覚で物語るステンドグラス、直進してくる光は神の声に等しい。(136頁)

 

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緊急事態宣言延長(6月20日まで)

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5月11日 Y新聞 全面広告 宝島社

人流規制──外出制限って、各美術館の対応が気にかかる。→ 閉館している京都文化博物館京都市京セラ美術館は6月1日より再開館だそうです(5月28日)。

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Y新聞には「奔流デジタル」と題する特集記事が載るけど、ネット空間でのコロナやワクチンに関する情報流布に懐疑的な「フェークニュース」指摘、購読者としては正確で使える情報開示をしてもらえれば良いのだけど、期待してはいけないのかしら。

 

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5月16日 15:57

『父の道具』展示即売 at 古書ヘリング

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14.8 × 10 cm 案内状

父の道具 農具・工具・民具その他[展示即売]
林哲夫作品展 installation, collages
2021年6月5日(土)〜13日(日) 11:00-19:00会期中無休

at BOOKS HERRING 古書ヘリング 二階

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父の遺した道具が「作品」になると感じたのは、まだ父が元気だったころである。元気といっても、八十近い年齢になり、---(略)--- あるとき、それらのなかに、ため息がでるくらい味のいい色、素朴な形をした鉄や木の道具が混じっていることに気が付いた。ようやくそんな年齢に自分も達したということだろう。 (『父の仕事場』2019)

 

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2020.9.20 BOOKS HERRING 

 

林画伯のブログ"daily-sumus2"には、「まだ先行きがはっきりしませんが、緊急事態は延長されるようですが、古書ヘリングの二階にて「父の道具」展は変更なく開催する予定です。ご無理のないようでおいでください。」との案内がありました(5月27日)。展覧会、楽しみですね。

南仏紀行-26 ポンピドゥー・センター

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それから急いでポンピドゥー・センターへ。左手の建物は移設されたアトリエで、ブランクーシの彫刻がちらりと見える。開くのが二時からなので今は諦めねばならない。(131頁)

 

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チューブ状のエスカレーターに乗って最上階へ登る。風は遮断され雨がやんで雲の流れが心地よく、青空がところどころでのぞいている。眼下、右手後方にエッフェル塔、右手上部にサクレ・クール寺院の卵型のドーム、素晴らしい眺めだ。(131頁)

 

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