ジャック・リゴーのカラー

 車内で読了しなかったので、阪急西院駅ホームのベンチにしばらく腰掛け読み終える。車両が走り去った後に吹き戻す冷たく強い風がジャック・リゴーの「自殺総代理店」(エデイション・イレーヌ)と一致する。小型本の手のひら感も合うのかな。十代の後半にこうした傾向の読書に熱中したが、やがて、卒業した。卒業と言ってしまったら身も蓋もないけど、死んでしまう訳にはいかないんだね。愛された記憶が、身体のどこかにあるのだろう。
 わたしはマン・レイが撮った、マネキン人形への眼差しが興味深い仰向けになったジャック・リゴーの肖像写真が好きなんだ。この本にはそれが使われている。駅の階段を足早に上がるのは、脱出の感覚かな、自由は難しい。

 エディション・イレーヌの続刊予定の一冊に、加波都るみ編(写真・地図多数収録)で「Ne Pas Perdus, pas de Nadaja(ナジャのパリ文学散歩)」がある。早く刊行して欲しいな。