雙面劇場 1979-1980


雙面劇場 1979.9.21 壬生森前町64
一結で鮪どんを食した後、急いで名古屋から帰京。さっそく寺町通りを上がってHow are you, PHOTOGRAPHY?展の3会場をギャラリーTerraから始め、奥野夫妻の「ビハールの人びと」「第三惑星の出来事」から写真を楽しむ。立体写真も良いけど写真らしい写真、京都らしい京都をとらえた樋口航の「広沢靄桜」などは、撮ってみたい作品だな---わたしには無理だけど。画廊やら街角などで幾人もの知り合いと挨拶。同時代ギャラリーの密室で新婚渡邉+加納和雄の物語写真と対面。そして宮本タズ子の「Rolling Egg」にはゲゲッときたな---いつもながらインパクトのある人だ。そして、ギャラリーマロニエへ、市川信也の「タテビワコ」モノクロの魅力が全面に現れて良いな。

同時代ギャラリー前から三条通りを望む
 さて、第10回京都写真展の搬入は午後7時、定位置の3階左壁面をお願いして展示作業を始める。今回は4点×3段掛けの全12点。独身時代のモノクロ・プリントを再登場させた。当時使ったのはブロニカニコンのレンズ。画角はアッジェと同じくらいかと思う。夜のアッジェと気負って撮った数年間が、わたしにもあった訳、30年も昔の風景だから、街に店舗の痕跡を捜すのは困難となってしまっている。一連の写真のネガは100本以上あるのだが、プリントに苦労したネガだった。再び暗室作業は出来ないが、保管していた台紙を取り出してみると、経年変化で痛みが激しく、今回の展示用に台紙を求めお化粧をしなおしたのだ。けっこう良くなったったと本人は満足している。

 シリーズのタイトルはシュルレアリスムの指導者アンドレ・ブルトンの書物「ナジャ」から引用した「雙面劇場」展示プレートには、この部分を写した。

「しかし私にとって、精神の下層の、もはやそこでは夜になることも夜が明けること(だからと言ってそれは昼だろうか?)も問題にならないような深みへと本当に降りてゆくことは、とりもなおさず、フォンテーヌ街の、いまはキャバレーとなり変わった「雙面劇場」へもどってゆくことにほかならない。」(巖谷國士訳)

 48本のビス留めも、3階展示のメンバーに助けられ、どうにか時間内に終了。その後、みんなで蛸入道へ移動しビールやら明石焼きやら小鉢で世間話。さて、みなさんからどんなお言葉を頂くことになるのか、24日までの会期が楽しみである。

「雙面劇場」と筆者