酒井健著「シュルレアリスム 終わりなき革命」

国立新美術館だけではないと思うが、独立行政法人化にともなっておかしな成績尺度が導入されてから、展覧会の企画・観客動員の仕掛けが胡散臭くなったのではないだろうか--例えばTwitterとのコラボ書き込み、芸術新潮最新号特集の「シュルレアリスムそうだったのか宣言」など。一般観客向けの記事で窓口を拡げるのは良いけど、ここから何処まで入り込んでいくのか、危惧される部分が多い。
 そうした中で、タイアップ本で腰巻きに展覧会の広告が刷り込まれているけど、酒井健著『シュルレアリスム 終わりなき革命』(中央公論新社刊、840円(税別))には、好感が持てた。作者と時代がきちんと書物の中に入っている。新聞の広告で知って書店に立ち寄った訳だが、著者撮影のパリ風景やナジャ(レオーナ・デルクール)の肖像写真など興味深い。1954年生まれの筆者はバタイユの専門家のようだが、なかなかどうして、きちんとした目配せが随所にみられる。