「残響」の香り

ある方の御好意で宮城県大崎市にある新澤醸造店が造り出した究極の清酒、超特選純米吟醸「残響 Super9」の試飲をさせて頂いた(限定200本で番号入)。命名のいわれは「9%精米」にあるようで、ここまで洗米すると、山田錦でも水に溶けてしまうところを、宮城県の「蔵の華」と云う酒米を用いて精米に成功したとの事。洒落た木箱の封を切り、ブルーの色硝子といった仕立ての瓶は、不思議な魔酒といった現れ方、もちろん日本酒でなく、ワインやウイスキーでもなく、ナルニア国の古酒ではないかと想像をさせる作り。---このアイデアにかかわった人を知っているので、なるほど彼のセンスだと思った---精米そのものがパックされているパンフレットを読みつつコルクの栓を開けるのは楽しいだろうな(試飲した時には、すでに開けられていたからね)。

 これまで、岩を削る清流の堅い切れ味が好きなんだと吟醸を評してきたけど、この「残響」は、清流が麓に下りる感じ、甘くて優しく、春の芽吹きなのだ。試飲をしている冷え冷えとした台所で春を感じるなんて不思議だ、「菜の花」の根が水分を採る土との境を口に含んでいるような味わい。これはなんだろう「水の国」の透明性に香りが漂うなんて---続けて一口、二口としたいところだったが、あまりに高価だと聞いたので、次ぎの同僚にバトンタッチした。