横浜でマン・レイ展

マン・レイ展 2011.12.5--2012.3.9 平日開館9:00-17:00 Fuji Xerox Art Space 電話045-755-5111

マン・レイ展の案内葉書(15×10.5cm)とカタログ(29.7×20.9cm pp.12)
 横浜在住の友人が、JR横浜駅前の「富士ゼロックス R&Dスクエア」でマン・レイの展覧会が開かれていると教えてくれた。それで、ネットで確認すると東京・赤坂にあった企業メセナのギャラリー「Fuji Xerox Art Space」が2010年5月に移設したらしく、東日本大震災の影響で臨時休館した後、再開して『結Yui ―井上尚子@バーチャル予感スイッチ研究所―』展を開催、次いで開かれたのが「マン・レイ展」であるようだ。企業を取り巻く厳しい環境の中で、メセナ活動を続ける姿勢に「有難う」と感謝の気持ちを伝えたい。これは、ぜひとも拝見しなければと「マン・レイ狂い」の血は騒ぐのだが、開館は平日の9:00-17:00と云う。会社を休んで上京となると厳しい事柄であり、展覧会資料は作られていないかとお尋ねした。会場の受付か事務局に「宅配便・着払いの送料自己負担」でお願いすれば、いただけるとの話し、事務的だけどこれも有り難い。
 しばらくして、京都に到着した荷物を開き、ブログを書き始めている。展示されているのは、ポショワール版画の『回転ドア』(10点組、1926年 ed.79/105)、 フォトグラーベ刷りの『電気』(10点組、1931年 ed.104/500)、 展覧会記念のオブジェ風カタログ『Le pain peint Beaux - Arts』(1970年 ed.500)、 ポール・エリュアールとの詩画集『容易』(1935年 ed.852/1020)の4アイテム。モダンでお洒落な展示になっているだろうと想像できるラインナップである。カタログの執筆は国立新美術館の南雄介さんで「マン・レイの<回転扉>をめぐって」として、デュシャンとの関連にふれつつマン・レイは「過去の自分を素材として、つねにそれと自由に戯れることを忘れなかった」と言及し、<回転扉>の様々な特性からマン・レイの個性について「あらゆる境界を、なんの深刻さもなく、やすやすと横断していった」と評している。---楽しく拝読させていただいた。
 カタログの奥付を読むと「出力・製本: 富士ゼロックスシステムサービス株式会社」とあった。それで気になって、事務局に問い合わせると、今回のマン・レイ展カタログからオンデマンドを採用したそうで、同社のカラー・オンデマンド・パブリッシング・システム「700 Digital Color Press」からの出力との事。通常の印刷物と比べて遜色もなく、軽やかな印象が展示物の<回転扉>とマッチしているのかと思った(ポストスクリプトにパーセント掛けているのかしら)。そして、これが大切なのだが、展示品の限定番号が表記されているのが嬉しい。版画は複数枚存在するけど、同じモノではなく、一つ一つが個別の名前(作品の来歴)を持っている。展示される時に一般的な版画では紙面に示されるので判るが、この『回転ドア』や『電気』では別のシートに記入されてるので、コレクターとしては有り難い訳。
 富士ゼロツクスの企業姿勢と製品群から版画コレクションの考え方は理解できる。マン・レイが2012年に活躍していたら、写真を核に「複製」のテクノロジーを自由気ままに楽しんだろうな。入場は無料と案内葉書にあるので、どうぞ気楽に、<回転扉>を行ったり来たりして頂きたい。京都からも近いから、わたしも拝見しなくては。