マツクス・エルンスト展


入場券の両サイドに穴が開いてるのは、割引券利用者を判別するためと聞いた。
名古屋へ帰省して、栄町の愛知県美術館へ行った。7月13日から始まった「マックス・エルンスト展---フィギュア×スケープ」は、山田五郎の解説にお笑いのおぎやはぎが絶妙のツッコミを入れるブラブラ美術・博物館(BS日テレ)で紹介されていたし、シュルレアリスムの画家エルンストはマン・レイの友人であり、マン・レイ・イストとして注目してきた。20代の頃には、エルンストのコレクターになろうかと思ったほどで、兵庫県立近代美術館で観たときには、本当に上手いと感激した。だから期待が大きすぎたのだけど、会場では感激する事がほとんどなかった、どうも愛知県美術館とは相性が悪いようだ。---入場券に穴を開ける神経には、美術とは別の功利主義が匂いすぎて、いやになってしまう---天井の高い空間のためかもしれないが、それぞれの展示品が、バラバラに置かれている印象。時代区分や傾向にもとづいて同じ雰囲気の作品が並べられているため、相互の力が打ち消されているようだ。重要作が沢山招来(ポンピドゥセンターやメニル・コレクションなど)されているのだから、上手く展示すれば魅力が倍増されるのだろうけど、展示センスがないな。センスの無い人が展示をするのは、もったいないよ---ポロック展でもひどかったからね。
 それでも、展示品にマン・レイも協力したレイヨグラム風の挿絵が入ったルネ・クルヴェル著「ナイフ氏とフォーク嬢」があって(ブラックサンプレス、255部限定)、実際の大きさ(18.4×12cm)を知ることが出来て有意義だった。なるほどなるほどと昔年の疑問が解けた訳。今展で興味を持ったのは「籠の中の鳥」(静岡県立美術館蔵)、「森と太陽」(富山県立近代美術館)、「森(月光の中のモミの木)」(個人蔵)、「ニンフ・エコー」(新潟市美術館)、「少女が見た湖の夢」(横浜市美術館)、「無題」(No.101 個人蔵)などだったが、沢山のエルンストの作品が日本にあるのに驚いたし、個人蔵の小品など欲しいなと思った。それらは佐谷画廊が日本に入れたのだろうか---同画廊のカタログ(1988.5.9-28)に図版が載っている。技のデパート山田五郎がテレビで言っていたけど、シュルレアリストの技巧は素人のそれだね、自由だけど、絵肌に見入ると奥行きまでに行かない。エルンストのサインの字は、どうして小さいのだろう、そんな事ばかり考えて会場を何度も回った。人も少なくゆっくり拝見できるのは、有り難い事だけど、企画側は苦労するだろうな。一般への受け狙いとしか思えない「像と空間表現」という「別の角度」なんてやめて、夢とエロティシズム、鳥と森を前面に出せばよかったのではないかと思った。
 メニル・コレクション(ヒューストン)から招来されたのはオシレーション(ポロックに影響を与えたかもしれない)を用いた「ユークリッド」(1945年)、円熟期の作品で上手いけど綺麗すぎるよ、メニルにはマン・レイの「サド公爵の想像的肖像」(1938年)もあるから、久しぶりに観たい。収蔵庫へ帰って行ったら一緒に並んで保管されているのだろうな、立ち会いたいね。

 美術館を後にして帰宅、兄姉と世間話をし、味噌煮込みバツグンに美味しい「みのや」で食事。暑い夏に味噌煮込み八丁味噌の塩分を身体が求めるのよ。部屋から名古屋みなと祭の花火を見る。昔話しをしながらビールに栗せんべい、気持ち良く眠る事が出来た。
 

エルンストの森がこんなところにあった。

みのやの味噌煮込みうどんは最高に美味しい。

名古屋みなと祭 遠くで花火が上がる。