わたしたちのパリ 2012年


これは嬉しい。
マン・レイのパリ 1972年」展のカタログと案内状を海外に送った事は書いた。すると、パリから二つの返信が送られてきた。開封すると、今この時のパリが盛りだくさんで、カタログの拙文に反応してくれたんだと嬉しくなった。サザビーズのディレクターをしている旧知のAさんの封筒には、今年の3月にパリで行われたオークションの案内状が入っていた。それは、同セールの目玉となった油彩「二つの顔のイメージ」(1959年)を使った楽しい意匠で、開くとバスキアが現れる。拙著「マン・レイの謎、その時間と場所」で一章をあてたほど、わたしの大好きな作品、文中では「私達を覗き込んで熱心にメモを取り、カメラを向けていた、貴方の事が気になっていました」と書いた(87頁)。この作品は1998年、2000年とオークションに出され、今回はアメリカの所蔵家からの出品で予想価格1,500,000〜2,000,000EURに対し、2,416,750EUR(手数料込み)の落札価格。マン・レイのオークションレコードを記録する事となった。ついに、マン・レイの油彩が邦貨換算で約2億5千万円とは、嬉しいやら、悲しいやらで、複雑。これじゃ、サラリーマン・コレクターではどうにもならない(涙)なんて事を、改めて案内状を手にしながら思った。Aさんは「パリに来られたら、マン・レイとジュリエットが写っているオープニングレセプションの写真をお見せしましょう」と誘ってくれた。1972年のパリなら見たい、見たくてたまらない、画像をメールで送ってよと頼まなくっちゃ。

Sotheby's ART IMPRESSIONNISTE & MODERNE ART CONTEMPORAIN at PARIS

      • -

もうひとつの封筒は、ボナパルト通りにあるギャラリー1900-2000からのもの二点で、ダビットとマルセル・フレイスの献呈カードが挟まれていた。一冊はマン・レイとモーリス・タバールが撮ったパリの写真を纏めた小型本(2000年刊・表紙がマン・レイの撮ったエッフェル塔で、今回の展示にぴったりと思った)。他の一冊は同画廊が催した「マン・レイ アトリエにあった油彩とデッサン」展のカタログ。開けると四運動画廊での「40レイヨグラフ」展オープニングでのマン・レイの写真が掲載されていた。ギャラリー1900-2000のマルセル・フレイスはもともと四運動画廊の人、当時の関係者がこのように現れてくるのは、京都での展覧会を考えたわたしとしては、感無量。パリと京都がつながっているようだし、2012年と1972年も通底している気分である。「マン・レイのパリ 1972年」展では四運動画廊の展覧会ポスター、カタログ、案内状と展示しますので、下段写真を思い出しながら観賞して頂けると嬉しい。

Galerie des 4-Mouvements,1972 M.R. et Marcel Fleiss au vernissage de l'exposition Man Ray,

Galerie des 4-Mouvements,1972 Timothy Baum, M.R. et Marcel Fleiss