メモワール 古屋誠一/小林紀晴


昨晩から写真家・小林紀晴の新著『メモワール 写真家・古屋誠一との二〇年』(集英社、2012.12刊)を読み始めた。古屋の写真集は、これまで書店で手にしてきたけど、なにかしっくりこない感じだった。美しい女性の登場する日常の写真、私写真のひとつの成果とは思えるのだが、どこか、心に良くない感じがあった訳。それを、今回、小林の本を読みながら謎が解けてきた。写真をやっている者に、つきまとう「愛する人を写真に撮ると」精力を奪い取ってしまうような感覚、写真をやり続けたいけど、穏やかにも生きていきたい葛藤に、つきつめて撮ることにブレーキを掛けてしまう自分。これまでの素晴らしくも悲しい写真の仕事には、荒木の『センチメンタルな旅』や深瀬の『洋子』、濱谷の『女人暦日』などがあるけど、京都写真クラブの仲間に「愛する人」シリーズの作家っていただろうかと思った。---古い友人の名古屋の写真家に、本書を紹介し、彼の感想を聞きたいと思った。3.11への記述も含まれて小林が写真家だからこそのアプローチに、共感を覚える部分が多い。わたしは写真を撮らずに過ごしている---