23回目の瑛九展


カタログ 25.7×18.3cm PP.24
東京・南青山のギャラリーときの忘れもので、瑛九の個展が開かれている(6月1日迄)。前衛芸術の偉大な先駆者の仕事を長きに渡って紹介されてきた綿貫不二夫氏の力のこもった同画廊で23回目の瑛九展である。記念の展覧会カタログを拝見しながら、大作『林』(1959年)の図版を楽しんでいる。東京在であれば、すぐに画廊へうかがうところなのだが、残念である。今回のカタログには東京国立近代美術館主任研究員・大谷省吾氏のテキスト「瑛九のフォトデッサンをめぐる3つのメモ」が載っていて、『眠りの理由』の表紙別ヴァージョンの考査や戦前日本におけるシュルレアリスム受容の問題点などの指摘があって、興味深い。わたしの場合は、どうしてもマン・レイとの関連から瑛九の仕事を見てしまうが、大谷氏の引いた梅津元氏の「天地の曖昧さこそが、フォトデッサンの特質である」という事なども含め、研究と展示の現場におられる方々の鋭い眼差しに感服させられた。展示品は売り物ですから血が騒ぎます。尚、31日(金)には梅津氏によるギャラリートークが予定されている。