Qui suis-je ?


Qui suis-je ?
わたしがパリにやられてしまったのは、アンドレ・ブルトンの『ナジャ』を読んだ時で、10代の後半だった。パリの街路を舞台に展開する、この不思議な書物は「私とは誰か? ここでとくに一つの諺を信ずるならば、要するにすべては、私が誰と「つきあっている」かを知ればよい、ということになるはずではないか?」(巖谷國士訳)と始まる。今回の展覧会の企画を聞いた時、すぐに浮かんだのが、ブルトンの問いかけの言葉 Qui suis-je ? だった。マン・レイにつきまとっているわたしとしては、この道を突き進めば、私が誰なのかが、わかるのではと真剣に思っている訳。小さなカードを前にして、ブルトンが「ナジャ」に声を掛けた1926年10月4日のラファイエット通りに思いを馳せている。その場所は展示中の絵葉書(アレヴイー通りとグリュック通り)の場所からも近い。尚、カードのフォンテーヌ街42番地はブルトンの住まいである。
 ちょっとひねったつもりだったけど、展覧会参加の小杉憲之さんから「これって、ナジャですよね」と指摘されて驚き、嬉しい気持ちとなった。氏はルーブルの女性像に恋焦がれ、通い詰めたとの話。作品のタイトルは「Mon Paris Ma femme」、ナジャに劣らず、この「私だけの女」も魅力的だ。


BLUE GUIDES PARIS by Teruo Ishihara at Gallerie Maronie, 10-15 Decembre, 2013