おじさんたちのトークショー

昼過ぎに出掛けて同時代ギャラリーの「How are you, PHOTOGRAPHY?」展を拝見、みなさんの力作を楽しませていただいた。立花常雄さんのアプローチ「5911(赤988)〜32-438-1(赤438-1)」は写真と視覚と文学がクロスして、いつもながらに視ることの危うさが表現され、うなった。アクリルボックスにフィギアを封入し、回りの面にスライドのような映像を配置した二宮利洋さんの「1人」のやりかたも、掌にのせて覗きこむと、フィギアの顔に光が差し込んで好感がもてた。次いで、ギャラリーマロニエに移動して、5・4階を拝見。オカダミツヨさんの「メタセコイアの並木道」がリリックで、よろしかった、コメントに「並木道が流れていく この一瞬もまた流れていく」とあるように、彼女の仕事は泣かせてくれます。4階では戸田賢太郎さんの「遠くへ」の前で眼が止まった。会場から印画紙上の視点へ眼が引き込まれていく、オーソドックスな遠近法ではあるが、その場所で撮った作者の眼を感じさせる、写真らしくて、こういうの好きなんです。

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スピーカーのみなさん。
ギャラリーマロニエで開かれた午後3時からのトークショーには、沢山の方に来て頂きました。みなさん有難うございます。話し手が椅子で、皆さんが立っておられると申し訳なく、一番バッター(50音順)のわたしなどは上手くお話ができませんでした。
 国際写真コンテストの都市風景部門で賞をとられ凱旋されたばかりの、市川信也さんの写真は研究生活をおくられたパリでの、写真三昧と云う幸福な時間に現れた「地下鉄」のシリーズ、カメラはCLEとお聞きしたたが、ほろ苦いエピソードも挟まれ、自作解説はこうじゃなけゃと思った。「受賞」と関連付ければ「取り返したパリ」となりますね(笑)。岩村隆昭さんは1971年のパリ、ブレッソンに影響されつつ、モノクロのブレッソンからカラーでの独自性をねらわれたとのお話。古いフイルムでも、さすがにコダック、再現性が損なわれていないと御本人、カメラはミノルタのSR7との事(わたしの横にお座りでしたので、写真を撮れませんでした。) 奥野政司さんの写真は、プラハから移動してのパリ入場、ライカM6の視野調整に手こずりながらの撮影だったとか(氏の魅力的な構図が確立される前でしょうか)、「お・き・ま・り・の・パリ」故にエッフェル塔と北ホテルと凱旋門を持ってこられていますが、遠巻きのパリ(3点)の距離感は、さすがに氏の魅力です。「人を撮りたいけど街が大きくて」「都会の人はフレンドリーではないし」との事でした。わたしのように会社努めをされている小杉憲之さんは、仕事の関係でパリに出掛ける事が多く、3-4日の滞在でも、「わたしの女」に会いにルーブルへ日参されるとの事、プシュケ像は1790年代の彫像で、撮る角度によって表情を変えるとの事で、出品作品の撮影日はそれぞれ異なるとか。
 とりは森岡誠さんで、トークショーの最初に今回の企画に至る経緯ついての話しをされたていたが、ヴィンテージ写真2点を含む「連想」の様子が、インスタレーションで示されている。人と通りの名前で巡る想像上のパリ、グーグルで巡るパリが蔓延すると、行かなくても行った気分となって、記憶から肝心なものが欠落してしまう。ジャンとジャックの物語や、ベトナム三世の小さな女の子。「アッジェはエッフェル塔を撮ってないんですよ、需要がなかったんだね」などど---

 市川さんからプレゼントをいただき、参加者一同、楽しい写真の集まりとなった。参加の方々からいくつかの質問、パリは身近になりましたけど、フルタイムの会社員には遠いです(涙)。トークの後はワインを飲みつつ世間話、そして、居酒屋へ移動、京都の写真月間はまだまだ続きます。わたしの方は、祇園・巽橋近くのバーで一杯、ゆっくり楽しく、遠来の友人と飲みました(感謝)。

市川信也(Paris melancolique)

小杉憲之(Mon Paris Ma femme)

奥野政司(後ろ姿) (お・き・ま・り・の・パリ 遠巻きのパリ)

森岡誠(連想)

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トークの後は、やはりワインでパリ気分(笑)