マン・レイ生誕124周年 切り取った写真


Self Portrait by Man Ray. P.2 "Man Ray with his mother, Philadelphia, c.1895"

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マン・レイは自伝『セルフポートレイト』(リトルブラウン、1964年刊)を、「わたしは三歳の時にはじめて紙に男の絵を描いたと、母は言った。」と初め、「後になって、わたしは自分自身がまちがって生まれことを知った」と続け、振り返る人生をミステリアスな雰囲気に置いている。自伝の多くが自己におもねるものであるのは言うまでもなく、マ・レイにおいても同様である。しかし、「読み物」として面白い。これは、画家が描く「セルフポートレイト」である訳で、客観的事実については、まあ、いいかのスタンスが必要だろう。彼は慎重に写真を選んで同書を飾った、上掲したのが最初に挿入された写真である。正装した6歳頃のエマニュエル少年が母親の脇に立っている、男の手が認められるものの、頁を開いて読み始める者に違和感が無いのは、切り取った写真のバランスが上手いのかも知れない。
 その基写真をマン・レイの評伝を書いたニール・ボールドウィンの著書に見付けた。母親・マーニャの手は長男・エマニュエルと夫・メラック(後にマックスと名乗る)の肩に掛けられ、椅子の上に立つ妹・デボラも写っている。ロシアから渡ってきたメラック・ラドニッキーが同郷の女性と結婚し築き始めたファミリーの貴重な営業写真館写真である。
 マン・レイが『セルフポートレイト』を出版したとき、手許にあったのは切り取られた写真だったのだろうか、それとも印刷原稿の段階で切り取ったのだろうか、その時のマン・レイの気持ちが知りたい。今日は彼の124回目の誕生日である。---毎年、思い出して書いたり飲んだりしたいので「光誕祭」と名付けようかしら、でも、宗教みたいですね。

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Radnitzky family portrait, Collection of Neil Baldwin