中上邸イソザキホール訪問


京都駅 9時30分
建築家・磯崎新設計になる個人住宅を活動拠点とされている福井県の「アートフル勝山」の活動と金沢21世紀美術館で開かれている「ジャパン・アーキテクツ1945-2010」展を体験しに、一泊二日の小旅行をした。主催は東京・青山のギャラリーときの忘れもの、旅行のナビゲータを「都市住宅」や「GA HOUSES」などの編集に携わり、旅行前日まで、同ギャラリーで端島複合体(通称軍艦島)、同潤会アパートメントを撮られた写真展「都市のインク」を開催されておられた植田実氏にお願いすると云う豪華な催し。参加者は東京の他、岩手、新潟などから15名、さて、どんな道行きとなりますか。
 京都から新快速で米原へ出て東京組と合流する手はずで9時30分に出発。皆さんが切符を手配していた特急「しらさぎ5号」の米原増結車両が故障するトラブル発生。皆さん(わたしも含めています)の平均年齢が高いのでこれはいけません。福井駅からはマイクロバスで福井県立美術館へ移動。福井は1948年の震災で建物の多くを失っているが、福井鉄道路面電車が運行され、お洒な雰囲気、他県と比較すると子供達の体力も学力も上位で、住みやすい街と云われているそうだ。わたしが福井県立美術館にお邪魔するのは、「あるサラリーマン・コレクションの軌跡 〜戦後日本美術の場所〜」展と「マン・レイ」展が開かれた2004年以来で、今回が三度目になる。展示中の「福井の小コレクター運動とアートフル勝山の歩み」展(2月8日まで)を拝見。展示の中心は磯崎新氏に自宅設計を依頼した、勝山在住の中上光雄、陽子夫妻のコレクション。福井と関係のある作家に絞った展示なので、全貌は判らないが、エロテックな初期、池田満寿夫と光溢れる瑛九の油彩が圧巻であり、泉茂や吉原英雄など関西作家も含まれて興味深く拝見。磯崎新の「ヴィッラVol.3 NAKAGAMI HOUSE」の設計図も展示されていたが、個人的には難波田龍起の油彩「形象 青」(1991年)に惹かれた。

西村直樹学芸員から説明を聞く

福井県立美術館 小野忠弘「ニワ」1985年

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勝山市福井県北東部、福井市からえちぜん鉄道でおよそ1時間、九頭竜川の東岸に位置し、かっては機業で栄えた街、現在の人口はおよそ26,000人、風光明媚で鮎釣やスキーを楽しむ観光客が多く、越前大仏でも知られるが近年では県立の恐竜博物館が脚光を浴びている。福井県には地質学の世界標準時間(過去5万年)となる水月湖があるんですよと荒井さんから聞いた。

荒井由泰氏(アートフル勝山の会代表)の道案内で一路、勝山市へ向かう

九頭竜川

「ふくいの伝統的民家」株式会社中西機料店 元町一丁目

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磯崎新設計 「中上邸イソザキホール」

記念写真撮影前のみなさん

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中上邸がある元禄一番街通りから歩いて1〜2分、未公開であるが、勝山市にはもう一つ磯崎新氏設計の個人住宅が建っている。みなさん専門家なので詳しく設計の意図をお話をされ、写真を幾枚も撮られていました。実物に則して仕事をされる建築家というのは写真を撮るんですね。今日は日が射して温かく白嶺が反射して美しい。

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駐車場から
県立の恐竜博物館(黒川紀章設計)は、世界的にも有名で全身骨骼42体、ジオラマになっていて迫力満点、館内の写真は人類だけをアップしておく。ヒトとチンパンジーの膝の骨の違いや「拡大した脳」など興味深くルーシーとトゥルカナーボーイの模型など、今、わたしたちはどこにいるのだろうと、キョロキョロしてしまった。

恐竜博物館 人類骨骼の展示

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平泉寺白山神社はこの先。
ときの忘れものの綿貫氏の説明では、平泉白山神社の共同墓地は素晴らしく、高橋治の小説「さまよう霧の恋歌」(新潮文庫)の舞台ともなるほど苔が幻想的と云う。それで、参道を登り始めたのだが、雪で断念。ここは1300年の歴史があり、白山登拝の拠点である白山三馬場のひとつ、最盛期には僧兵8000人を数える中世の一大宗教都市。でも、一向一揆で焼き討ちにあい衰亡。苔の美しい季節を綿貫氏が詳しく、熱く語ってくれた。スベらないよう登りかけた有志も、ソロリソロリと撤収、暗くなってまいりました。

気をつけて下りましょう。

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中上邸イソザキホールからの光が美しい。ホテルからタクシーで移動し6時からのアートフル勝山の会のレセプションにわたし達も参加させていただいた。地上二階建、鉄筋コンクリート壁式構造の住宅は作品展示と歓談の出来るホールになっていて、螺旋状の意匠を持つ太い柱が二本、一般的にカーブのある壁面に額などを掛けると収まりが悪いけれども、フックの構造、バランスなどを含めて見事に処理されている。
 中上光雄・陽子コレクションとアートフル勝山の活動については、展覧会のカタログに詳しく紹介されているが、挨拶をされた中上さんのご子息の言葉に、同じように子供を持つコレクターとして涙が出る思いだった。わたしは、娘をお二人のように育てる事ができただろうか、芸術家と自然に交流する生活、客人を迎える喜びを知っておられる母親への思いをご子息から聞いた。いつも、家人から叱られるばかりの、ダメ・コレクターには望めない言葉であった。

挨拶される荒井由泰氏


リー・ウーハン「項 B」木版 (荒井コレクション)

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体調を崩しておられる中上さんに代わり、今宵のホールでは荒井さんのコレクションが披露されている。氏のコレクションについてはときの忘れもののブログで教えていただいていたので、現物と対面できて幸せだった。オデロン・ルドンの「光の横顔」の他、駒井哲郎、長谷川潔恩地孝四郎と続いて眼福の展示だった。

参加者は邸内をパチリ、パチリ

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「アートフル勝山の会」の皆さま、有難うございました。美味しかったです。そして、ちょっと呑みすぎました。会則(?)に、「妻帯者は夫婦二人での参加が義務づけられる」と聞きました。挨拶をされるそれぞれのご家庭の雰囲気が垣間見えて、街の文化が背景にあるのだと納得しました。京都では難しいですね(涙)。