山田英子著『わたしの京都』


レティシァ書房 高倉通二条下ル

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わたしが友人の萩原健次郎に誘われて詩誌『ガルシア』に参加していた事はすでに報告しているかと思う。たまたま、レティシア書房の平台でミニコミ誌をながめていたら、棚の奥に山田英子の名前がある詩集。その腰巻きに「遺稿集」とあるので驚いた。彼女は『ガルシア』の同人であり、紙面で共演した間柄。当時、依頼されて詩集『火の見』の出版記念会を撮影した事が懐かしい。その後、わたしは詩人たちの世界から遠く離れてしまったので、「楽市」や「七月」などの詩誌を知らないし、詩書の棚も素通りしているので彼女の『気をおびる物たち』『やすらい花』『夜のとばりの烏丸通』『べんがら格子の向こう側--京都町なか草子』といった著作も知らなかった。まして、彼女が帰らぬ人となっていたとは残念でならない。レテイシァ書房で「遺稿集」を買い求め、読み始めている。巻末に2009年8月30日歿とあるから、享年73。若い別れだと思う。京都に生まれ、京都に暮らした女性の中にある古い町の様子、「魔界」のディテールが、本の形で残されている。これから、ゆっくり頁を進め、故人を偲びたい。


山田英子著『わたしの京都』(思潮社、2011.10刊) 19.6×13.5cm pp.190

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