『沈黙と沈黙のあいだ』 山内功一郎


『沈黙と沈黙のあいだ』19.5×13.5cm pp.234

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山内功一郎の新著『沈黙と沈黙のあいだ』(思潮社、2017年12月刊、本体定価2,400円)を読んでいる。---と云うのとは、ちょっと違って、「見ている」のに近い体験を先程から続けている。著者の青春が本の頁からグーグルのストリートビューの画面に飛んでしまって、サンフランシスコの街でバスを降り、数ブロックをクリックして歩き、画家ジェスの「ヴィクトリア朝風の邸宅」の「呼び鈴」を鳴らしてしまった(グーグル画面は2017年9月)。著者の若々しい好奇心、ファン心理が気持ちよく「クッキーモンスター」にさせてくれるのである。それに、わたしも同類だから本好きの「眼」がよく判る。ジェスが著者への返信に示した「自分の芸術論というか、もっとわかりやすく申し上げれば、創作論をできるだけ言語化しないようにしてきました。」に対する、「文学談義」よりも、同じ空間にいるだけで幸せだと感じる様子が、本当によく理解できる。
 山内功一郎が愛し研究の対象とした詩人と画家たち(ジェス、ロバート・ダンカン、マイケル・パーマー、アーヴイング・ペトリン)が東京や京都にやってきて、著者と共に日本の街と文化に接する様子、サンフランシスコやパリで著者が控えめに投げかけた、「沈黙」でもあるような問を、本書を手にされた方々と分かち合いたい。若い時に影響を受けた人達への敬愛が、随所に湧き出る「泉」のような本だと思う。有難う。

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グーグルの画面