クロード・カーアン: シンポジウム


アンスティチュ・フランセ関西

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午後1時から「クロード・カーアンとその時代」と題するシンポジウムがアンスティチュ・フランセ関西・京都稲畑ホールで開かれた。大阪芸術大学長野順子さんを代表とする「クロード・カーアン展覧会実行委員会」の主催。わたしがカーアンを知ったのがいつ頃だったかはっきりしないが『写真とシュルレアリスム』と云う1995年にマドリードで開かれた展覧会のカタログが手許にあるので、20年以上前からなのは間違いない。ただ、カーアンの「ユーモア」のない写真群には戸惑う事が多く、気にはなるけど、遠ざけると云うスタンスでこれまで接していた。それが、日本でカーアンの展覧会を開きたいと云う人達が現れ、勉強会がスタートしたとあって、カーアンの仕事を丹念に検討する時期になったと心が騒いだ。会場には長野さん蔵書のカーアン資料が並べられ本好きには有り難い催しとなっている。---コレクターの立場からすると、カーアンの書籍類の価格が気になるところだが、Abebooksによると1930年に刊行された自伝的エッセー『無効の告白』は邦貨60万円を超え、1934年のジョセ・コルチ刊の『賭けは始まっている』も9万円を超える。写真では1点500万円を超えるものもあるようだ。


Jennifer L. Shaw "EXIST OTHERWISE ── THE LIFE AND WORKS OF CLAUDE CHAUN " 2017

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シンポジウムは水声社から『クロード・カーアン──鏡のなかのあなた』(シュルレアリスムの25時叢書、2010年刊)を上梓されている永井敦子さんによるセルフポートレート写真にフォーカスした発表と、カーアンの地元ナントから来日されたパトリス・アラン氏の「クロード・カーアン: 永続的カーニヴァルを宣言するリュシー・シュオップ別名クロード・カーアン(1894-1954)」の発表。その後、休息を挟んでディスカッション。さらにサラ・パジルによるオマージュ映画『Magic miror』の唄邦弘氏の解説を交えた上映。予定時間を上回る熱心な集まりで堪能させていただいた。カーアンの展覧会が実現される事を願う。

永井敦子(上智大学)発表

パトリス・アラン(ナント大学)発表

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忘却されていたカーアンが、1980年代から見直され、90年代に入ると多くの評論の対象となった経緯については、永井さんの著書に詳しいが、カーアンの写真はジャージー島時代にドイツ軍によって略奪・破壊されたが、後に古道具屋などで発見されたとディスカッションで聞いた。彼女の写真は11cmぐらいの小さな物が多いとはいえ、ジャージー島の写真店に残されていたネガや、大事にしていた大きなブリントもあり、これは別の友人のところに送ったりして保管されていたと云う。現物のオーラを楽しみたいね。