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ART OFFICE OZASAで催された吉増剛造展でのパフォーマンスと、詩人で美術評論家、教育者の建畠晢氏との対談に参加(司会は楠本亜紀さん)。会場は立錐の余地もないほどで、熱心なファンの方々とともに熱気がこちらにも伝わってきた。文字の欲望、フィールドの欲望、紙とペン先の間、接触するせつなの無限の距離、会場のコクリート床に若林奮の金槌が振りおろされると、音が響いて、ベン先との接触が引き伸ばされる感覚、書く行為が視覚化され、最初の「音」にもどされる。若々しくチャーミングな吉増。とことん書いていくと、スピードの問題もあるけど、字は小さくなり、カタカナを書く肉体が非日常に現れ、薄紙を突き破って--- それを撮影しながらスクリーンに投影すると、吉増の獣のような叫び。氏は「隙間が怖い」と笑っておられる。わたしも先日来、拝見しているパノラマや多重露光などを経た写真作品に改めて興味を持ったが、今回のパフォーマンスの主役は「音」であると思った。詩の言葉ではなくて物質の言葉であるようなもの、シャッター音を失った写真、フィルムの透明性に宿った魅力をも捨てた写真に、なにが残るのだろう。実作者の刺激に満ちた発言に、こちら側も、物を作りたくなった。紙が呼んでいる、紙の声が聞こえる。「声の蜃気楼」。荒木経惟の身体性を出自と関連付けるエピソードなど、面白さ満載の90分だった。超豪華な布陣による今回の催しを企画された画廊の胆力に心から感謝したい。
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吉増剛造『表紙 omote-gami』思想社
同書の写真選び、言葉選びを担当された楠本亜紀さんの「うらばなし」が良いのよね---