池田康 詩集「エチュード 四肆舞」


étude shishimai ikeda yasushi 18.8 x 12.1 cm pp.110

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雑誌『みらいらん』の編集発行人である池田康氏が新しい詩集を上梓された。4行1連 x 4の16行の詩が48篇。リズミカルで極めて読みやすい。ゴツゴツした詩の言葉を使う詩人が多い中、「手作り諺」にもつながるような懐かしさを感じる。1970年代の中頃を最後に「詩」から遠ざかったわたしには、懐かしい言葉と思想、時代の背景である。一回りした辰年うしの言語感だろうか? 最初に置いた「塩の雨が降る / 第五の季節 / 大地の亀裂に / 黒い頭痛が伝播する」(壱 i)からして、恐ろしげな予感。夏の夜に、これほど似合う詩の16行があったとは。地球の生理を強く意識する今年にあって、池田康氏の四色の雨粒は、誰かが四角に切ってしまって、直接、落ちてきた感覚。沢山の16行に目を留めたが、二つほどの最初の4行を転記しておきたい「頭のつぶれた木ネジは / 永久に其処につきささっていなければならない / 頭のつぶれた男は / 永久に時代をさまよっていなければならない」(壱 壱 vii)、「かわらけに酒 / 飲み干せば 雨 / 肝を洗い 骨を洗い / 地に吸い込まれて消える」(弐 i) 。そして、また、暗い夜の中で氏のリズム感に心がなごむ「羊一頭 / ひまわりニ輪 / 雲雀三羽 / ひらめ四尾」(参 i)これが続き15行目で「ねむりタイムマシン十五機」、16行目で「ねむれま千一夜物語秘本十六話」、救われます。男気にあふれた孤独な詩の行のなかに、ダンディズムが輝いている。暑い夜にこそ、読みたくなる詩だと思う。ビールを飲みながら氏が指摘するように「忘れる練習を始め」(参 ix)なくては。池田康 詩集「エチュード 四肆舞」は洪水企画から発行された。定価:本体1800円+消費税。