ヨハネス・ドゥンス・スコトウス著 花井一典、山内志郎訳 哲学書房 1989
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先日催して頂いた「マン・レイ・トーク」の御礼に古書Herringへ伺ったら、中世の哲学書を紹介された。「神の認識可能性」と「神の単純性」からなる本書はもとより中世哲学に関する素養なく、著者も訳者も刊行先についても不案内な小生、しかし、洒落たペーシノンブル、書容設計の確実さに期待MAXの本である。こんな冒険を銀紙書房でもしてみたい。哲学者ルパンならばこそ、扱う書物だと改めて思う。哲学を置き去りにして21世紀を生きる者には、戻らねばならない世界だろう。
わたしの最近の関心事から「あとがき」の一部を引用しておきたい。「……したがって、文脈の要求する語感に構わず同一言語には同一訳語で押す『厳密性』、印欧語の特殊事情を背後に抱える原文の文章構造をそのまま和文脈に転用する『忠実さ』は、むしろ進んでこれを断念した」。
ルパンによると本書を刊行した中野幹隆(1943-2007)氏は、『現代思想』や『エピステーメー』の創刊編集者。恐るべしルパン、ご注文は同氏まで。