『1930年代モダニズム詩集』

栞に寄せた「天使は肉声でうたう」藤原安紀子さんの名前が編者よりも大きくて、本の著者のようにも思え、不思議な印象を与える。生きている詩人・女性の名前の強さはなんだろう、季村さんが願うものとは--- で、

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『一九三〇年代モダニズム詩集』季村敏夫編 みずのわ出版 2019.8.15刊 定価本体2,700円+税

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季村敏夫さんが纏めれた戦前の(未知の)詩人たちの本が出た。矢向季子のエロティックな詩篇に心が止まる。神戸の竹中郁から始まって、足立巻一が『親友記』で描いた亜騎保、佃留雄らに惹かれてきたものだから、矢向とともに小林武雄夫人の隼橋登美子、生没年等不詳の冬澤弦の三人が加わって、スクリーンに若い言葉が映し出されている様子。100年一昔、同じようなきな臭い風が西の方角から吹いてきている昨今、装幀された林哲夫氏の見事な感覚によって、涙の中にしばらく閉じこもらせてもらった。

 

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みずのわ出版柳原一徳氏のブログによると「600部の小部数限定出版」、愛おしくコデックス装の頁を開いている。「私を包む昼間の仮面と埃り臭い衣服は /  夜の肉体と一緒にすべり落ちる」(32頁) あるいは、「神々の嘘にあたしは疲れたが / あたしは剣を恐れはしない」(50頁)。『親友記』と『評伝竹中郁』を読み直している。涙ばかりです。

 

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