『ジェイムズ・リー・バイヤーズ 刹那の美』 坂上しのぶ

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坂上しのぶ『ジェイムズ・リー・バイヤーズ 刹那の美』21.6×15.6cm 208pp. 青幻舎 2020年1月18日発行 定価:本体3,800円+消費税

 

 上の写真は三条東洞院・京都中央郵便局前「YMCAで教えていたとき、バイヤーズはここを歩いたのかしら」とパチリ。 

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 旧知の才女・坂上しのぶさんが2017年に上梓されたバイヤーズの本(注)を、日本語でも準備してくださった。彼女のバイヤーズ愛については折に触れ教えていただいていたが、「なるほど、これは、いかれてしまう」と思い、彼女の興奮を読み始めた。アメリカ人芸術家バイヤーズ(1932-1997)の日本での日々に焦点を絞った本書は、彼を愛し、愛された女性たちによって形作られ、ページの隅々に芸術家が今も生きているような感動を与えてくれる。わたしも影響を受け、坂上さんがバイヤーズに興味を抱くきっかけとなった一日だけの展覧会が行われた寺町のギャラリー16があった通りを(現在は移転)、彼女の本を持って歩いた。

 わたしが三嶋亭から新京極に抜けるこの通りに通うようになったのは1975年からだから、バイヤースとすれ違うことはなかったが、彼については画廊主の井上道子さんからも、いろいろとお聞きしていた。なので、半世紀前の若きバイヤースの足跡を感じてみたかった訳。

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右側にギャラリー16があった。

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1967年1月14日の展覧会の様子が紹介されている pp.106-107 

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ボイスと同時代で、世界に知られる芸術家バイヤーズの仕事については、ロンドンのシムス・リードが京都で見せてくれたものしか知らないので、ここでは言及できない。坂上さんは硬い素材から離れていった作品は「よりエフェメラルな、次第に消えていくようなはかなさをあらわすものへと移行し、コンセプトはよりシンプルなものへと変わっていく」と述べておられる。日本文化が彼にどのような影響を与えたのか、喫茶店に入り続きを読んだ。この本はあまたある美術家の研究書と異なる「実に素晴らしく、日本人の書いた、外国の本。情緒に溺れず、客観的でありながら情熱と愛情に包まれている。」作品を見ていなくても、人を知ることはできる。それは、坂上さんの追跡の様子もしかり、「貴女の足跡がページのいたるところに残されて、感動ものなのです」
 
 読み終わりたくない 本である。

 

尚、バイヤーズの展覧会『奇想詩』が東京・日暮里の画廊 SCAI THE BATHHOUSE で2月29日(土)まで開催されている。

 

(注) 英語版  James Lee Byars: Days in Japan, Floating World Edithions 2017