東松照明デビュー『やきものの町 ─ 瀬戸 ─』岩波写真文庫 165 18.3×12.7cm pp.62 1955年10月25日発行
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中日新聞 1967.6.9 山本悍右、後藤敬一郎対談「写真の美」(部分)
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「中央に出ると毒される」
山本 私は学生写真連盟の人たちを買っている。作品としてはまだまだだが、自分たちの置かれた位置を写真に結びつけようとしている。
後藤 私も二、三の大学の写真部の仕事を見ているが、考え方は進んでいても写真作品になっていない。もっと学生らしく自分を大切にして写真に向かうべきだ。
山本 たしかに表現法を知らないが、私はあえて技術的な指導はしない。それにカメラ雑誌も見るなといっている。それよりも自分の位置のみつめ方が大切だといっている。いまは過渡期だが、こういう連中の中からいいものが出てくると思っている。若い人では馬場敬介、髙橋明旺君らが個展を開いているが、こういう人たちは親切に育てていきたい。
後藤 地方にいることが大切だ。中央に出ると毒されてしまう──。
山本 後藤君だって、たまたま住まいが名古屋ということだろう(笑い)。名古屋にいると問題にされないから東京へ出たがるのだろうが、親切にたたいてやらなければ名古屋から写真家は育たない。名古屋出身といえば東松照明君ぐらいだな。
後藤 東松君は中央に毒されず自分を守りつづけている。「長崎」などもいい仕事だった。この地方からこの人につづく写真家がどしどし出てきてほしいと思う。
『東松照明の世界・展』カタログ 18.2×25.7cm pp.194 カタログ制作: 株式会社491+白岩登三靖 巻頭挨拶文: 福島辰夫。
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