南仏紀行-9 アンジェ湾

f:id:manrayist:20210401160048j:plain

細長い広場の突き当たりには、濃い黄色に塗られた五階建ての美しい館、この最上階には晩年のマティスが住んでいた。画家が描いた室内風景の幾つかを思い出し、部屋からの眺めを想像する。(37頁)

---

 

f:id:manrayist:20210401160010j:plain

車に注意して砂浜側に渡ると、アンジュ湾の海岸線がはるか彼方まで続いている。人々は海を眺め、椰子の葉が風に揺れる。京都市美術館で昔見たラウル・デュフィの油彩『ニース、天使の入江の夕暮れ』(一九三二年)の世界だ。あの絵に惹かれたのは、視覚じゃなくて、身体に当たる潮風の香りにあったのだろう、しばらくして広場に戻ると、北側に陽が当たり、腰掛けてお茶や食事を楽しむ観光客。印象派の画家たちも何処かのテラスに居たのだと思うと、目の前の人達に混じってゆっくりしたくなった。(39頁)

 

f:id:manrayist:20210401160029j:plain