次ぎの目的地、シュノンソー城に向かう。雨粒が窓を打つどんよりとした三月。王侯貴族の愛憎劇が土地をめぐる。夢とおとぎ話のシンデレラは映画の中から抜け出し森のどこかに潜んだようだ。バスを降りたわたし達はプラタナスの並木を連れ立って進む。視線の先には美しい城。(75頁)
シュノンソー城は代々の城主が女性だったことから「六人の女の城」として知られている。国王アンリⅡ世の家庭教師で二十歳も年上でありながら、変わることのない美貌で王の寵愛を得たディアーヌ・ド・ポワティエが、一五四七年に城を贈与される。(76頁)
さて、四時二〇分から与えられた自由時間は一時間。愛人と正妻、二つの庭園を歩いてみるが、今日は雨、水たまりが沢山できて、川の水位も上昇している。(80頁)
白とスレート色のタイル張り市松模様の床で梁の見える天井。ここに入った時、光の様子も作用していたのだろうが、マン・レイのデッサン『日曜日の放浪者』(一九三七年)を連想した。後で知ったが第二次世界大戦の時、城の入口は占領地区内にあったが、ギャラリーの南側の扉は非占領地区に通じていたと云う。(78頁)
[ル・コレッジョ 愛の教育] (78頁)
しかし、王が馬上槍試合で命を落とした後は、正妻のカトリーヌ・ド・メディシスに城を追い出されてしまう。(76頁)
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城の出口でパリからやって来た日本人ツーリストの一行と出会う。添乗員が聞いた情報では、「パリでストライキがありルーブルが閉鎖された」との事。フランスでは突然、ストライキが始まり、いつまでも続く。よくあるらしいが、観光客には辛い。(80頁)