アンディ・ウォーホルの毛沢東と三つのマリリン
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露骨なタイトルにしたけど、京都市京セラ美術館で開催されている『アンディ・ウォーホル・キョウト』展を観終えて、最初に思ったことだった。伝説の巨人(?)ウォーホルについては、小生、知っているような、知らないような、「ウォーホール」と呼んでいた世代としては困った状態だとまず打ち明けねばならない。彼の仕事がデュシャンのように現代美術(芸術)の大きな分岐点であったのはわかる、わかるけど「アメリカの資本主義や大衆文化のもつ大量消費、非人間性、陳腐さ、空虚さ」を作品に観るので、ポップアート登場の30年以上前に、これを嫌い、パリへ逃れたマン・レイを愛する者としては、居心地が悪い。なによりも、会場がディズニーランドやUSJのようなテーマパークの雰囲気で、チャラチャラとフロートに乗せられている感じ(ウォーホルらしい)、パチリを許された観客が、嬉々として「芸術」に参加する姿は「消費」なんです、恐ろしい。鑑賞が人生を考えさせるところに至らないのですな。
京都市京セラ美術館は平安神宮大鳥居の右横(東側)、リノベしてお洒落です。
開場10分前に皆さん並んでいます。大人気ですな。ボテロ展、サンリオ展に行かれる方も、いるのかしら。
それで、冒頭の「御土産なし」のことだけど、今回、初めて事前予約のネットチケットを購入した。便利だけど観覧した痕跡は残らない(エフェメラが無いのです)、小生はたまに再入場の日付印を求め、観覧証明にしたりするのだけど、「観たことの証明」が客観的にできないのですよ。これまで一般的に会場で配布されていた展示作品リストもQRコードを通したスマホ画面に変わっている。会場でメモする楽しみを奪われた訳。PDFに落とし自宅で印刷したけど、オリジナルのエフェメラと言えない気分なんです。スマホの間を抜け、慌ただしく観覧し会場を後にする。ウォーホル芸術の成果を、作品の表面にも求めちゃダメなんですな。── ポップアートの「駒」のひとつになるなど拒否したい。
会場はホールを抜けて左側、新館 東山キューブです。
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場内はスマホ・パチリOK、インスタグラムなどでのSNS・情報拡散を推奨され、にわかウォーホルが沢山いらっしゃいます。参加型のアトラクションですな。以下、小生も同類で楽しみました。備忘録として会場でのパチリと、気になった作品を書いておきます。本稿冒頭の(153)「前評判の高い『三つのマリリン』だけど、ピンとこない」の他 →
入場してすぐの光景
(22ほか) 京都を訪問した折りの舞妓を描いた素描(オフセット印刷、水彩)など
ウォホールが同じイメージ(人)を並べて描いたのは「三十三間堂で仏様を観た影響があるかもしれない」と言われるのですが……
(30) 京都から母親に宛てた絵葉書(消印: 1956.6.24東山)、「im OK / im in Japan」
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(222)映画『エンパイア』(8時間の上映時間を50分に抜粋したものを展示、小生が見つめたのは3分なんだけど)
(111、122ほか)キャンベル・スープとブリロの箱は、魅力を求めるのが間違いとしても、展示センスが悪く残念。チープなスープのイメージが生地色の額に入っているのがいけないのか。
ヘリウムガスで浮いたスコッチパック(98)『銀の雲』、壁にシルエットが映し出される照明に他のお客さんからパチリを頼まれてしまった。
「金は金。/ 汗を出して手に入れたか楽に入った金かどうでもいい。/ 使うときは同じだ。」
(177ほか)ジョン・F・ケネディ夫人の肖像『ジャッキー』は好きです。これは、彼女が再婚した海運王のオナシスがマン・レイの油彩『観測所の時間──恋人たち』をコレクションしていたと噂されるせいかもしれない。
(217)スクリーン・テストの岸田今日子はよろしいな。他にボブ・ディラン、サルバドール・ダリ、イーディ・セジウィック、中谷昇。
(176)『ダブル・エルヴィス[フェラス・タイプ]』は、同時期、京都国立近代美術館で展示されている方が迫力あり(最終段に京近美玄関の縦看板アップしておきます)、キャンベル・スープとブリロの箱も同じ。美術の文脈で見せるのとテーマパークとの違い、ドイツの思慮深さとアメリカの上っ面(ウォーホルの戦略)に原因があるかもしれない。
『最後の晩餐』ほか
『小さな電気椅子』
「ぼくは死ぬということを信じていない、起こった時にはいないからわからないからだ。/ 死ぬ準備なんかしていないから何も言えない。」
(211ほか)会場最終コーナー 死のイメージ、見直しました。
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最後に御土産の「甘い物」から、村上開新堂クッキー『猫』(税込3024円)、鍵善良房干菓子『花』(税込1080円)、ミントタブレット缶『舞妓』(税込540円)を紹介。まだ味わっておりませんが……
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ウォーホルにはマン・レイを描いた油彩があり、これを基にした版画のバリエーションも知られている。そして、友人ルチアノ・アンセルミノを介して(?)マン・レイの油彩や写真などをコレクションしていた。移民二世、商業美術から芸術への転向など、マン・レイと重なる部分が多い。違いはお金を上手に稼いだ人と、お金と無縁に生きた人。京都人の小生は質素に生きた仙人が好きなんです。
今回の展覧会はコロナ禍での順延を余儀なくされたが、2年の後、ピッツバーグにあるアンディ・ウォーホル美術館の所蔵品から、およそ200点(映像作品が別に15点)が招来、内、100点あまりが日本初公開。総監修:パトリック・ムーア(アンデイ・ウォーホル美術館館長)、展示デザイン: 前田尚武(京都市京セラ美術館)。尚、展覧会は2023年2月12日(日)まで開かれ、一般の入場料は土日祝(2,200円) 平日(2,000円)となっている。もちろん、小生は年金生活者なので平日選択。冒頭「2,000円」の根拠です(ハハ)。
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通りを挟んで徒歩3分、京都国立近代美術館玄関『ルートヴィヒ美術館』展の縦看板、アップしておきます。