愛しのマン・レイ展 出品: 339
65.0 × 49.5 cm アクリル、シルクスクリーン、鏡面加工
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『Les Grands Trans-Parents(透明巨人)』という言葉は「諍いの果てに到達するであろう新しい神話」を導く鍵として、戦間期の1942年6月にアメリカで発行された雑誌『VVV』創刊号に掲載されたアンドレ・ブルトンの「シュルレアリスム第三宣言か否かのための序論」に登場する。長くなるが引用したい。
人間はおそらく、この宇宙の中心でもなければ照準点でもないにちがいない。進化の面から見た動物の等級のなかで、人間よりももっと高等な部門に、ちょうど人間の行動が、かげろうや鯨にとっては無縁なものに見えるに相違ないのと同様、そのものの行動が人間にとって無縁なものに思えるような動物がかならず存在するにちがいないということは、容易に信じうることである。(アンドレ・ブルトン『シュールレアリスム宣言』稲田三吉訳 現代思潮社 1961年、126頁)
改めて奥付を見ると1973年2月2日(筆者21歳)に読了したようである。名古屋の画廊で荒川修作旧蔵という本作を求めたのは1979年11月、状態は良くなかったが、神話の世界、鏡の中に入りたくなったのである。
後に、家人とフェルー街のマン・レイのアトリエにお邪魔した時、中扉を開けた直ぐのところに置かれた楕円形の姿見に手書きで『Les Grands Trans-Parents』と書かれていたのに気がついた。マン・レイやジュリエットが身支度する都度、「神話」の声を聞き、また、帰宅時には街の汚れを落としたのだろう。マン・レイお気に入りの言葉にシュルレアリスムの神話が生きていると思った。
上掲の写真は、1996年に名古屋市美術館で催した小生のコレクション展『我が愛しのマン・レイ』に際し、写真家の今井一文氏にお願いし『Les Grands Trans-Parents』につながる、筆者の神話を表現していただいた。筆者44歳。若かったですな。尚、写真は名古屋市美術館カタログ、限定版15部に添付した。最近、スペインの古書店が13番本を所蔵しているのを知ったが、ちとお高い。ハハ → Cole & Contreras / Sylvan Cole Gallery, Sitges, BCN, Spain