
ギャラリー16で旧知の美術家・三宅章介の『ミトコンドリア・イブの末裔たち』展を拝見した(5月10日迄)。KG+に参加する展覧会でもあるが、会場が暗いので違和感を持った。スペインやポルトガルで大規模停電があったばかり、はて、これは「どうしてだろう」とたじろいだのである。
女性の顔貌がわずかに変化しながら並んでいる。写真家の安齊重男が学芸員、画商、美術家たちを撮影し、大判プリントした「FREEZE」のシリーズと美術館の壁面で遭遇した場が、既知の人の未知の部分が浮かびある不思議な世界だったことを、思いだてしまった。人であって人でないような、奇妙な存在。「あなたは誰、会ったことありましたっけ」

パチリは会場の雰囲気に合わせ「アンダー」にしています。

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三宅章介さんに、着想というか、種明かしをお聞きした。並んでいるのは画像生成AIによるアウトプット、100点から選んだもの。氏の学生時代の証明写真を取り込ませ、解析したAI(Midjourney)は「アジア系の女性で、ショートヘアー、1970年代の写真」と判断したらしい。これに対して、ヴィンテージの写真風などいくつかの「言葉」を介し、画像を出力させたものが、ギャラリー16に並んでいる。AIはプリクラのように一度に四点出力する。同じ条件で尋ねてもタイムラグから、別の画像が現れる。25回のアプローチで100点。
トライしたことがないのでソフトの使い方については筆者の錯誤があると思うから、詳しくは会場で作家にお尋ねください。面白いのは、「本作品は、20歳時に撮影された一枚の証明写真を起点とし……」と始まるステートメントもAIによるもので、学術論文風の仕上げを指示されたという。だからでしょうか、タイトルは「AI生成肖像によるアイデンティティの再構成に関する一考査」これには、脱帽です。
ステートメント下段のQRコードに携帯をかざすと、クラウドから元の証明写真が送られてきた。長髪でサングラス姿の若い三宅が「女性」と解析されていたのである。作者のアプローチからAIは人類の祖先イブを見つけようとしたのだろうか? 生物学的な「性」を見分ける能力が健在だとしても、わたしのようなシニアには「実戦」の場がありませんな(ハハ)

三宅章介氏、1950年、神戸市生まれ。AIを用いる表現に早くから関心を示し、昨年、大阪のギャラリー白で「ミトコンドリア・イブの息子たち」、神戸・Space31で「拡散する写真と詩とAI表象」、京都・同時代ギャラリーで「絵空事」。一昨年、京都・ギャラリー・マロニエで「写真史の旅の途中で」などで発表している。
氏は「これほどの変化に立ち会えるとは、長生きして良かった」と語られた。小生は心配性なので、5G〜6Gの世界になるとデジタル解析が人間の細胞を凌駕してしまうと思う。ヴインテージプリントの経年変化も、AIが巧妙に再現する、しかも三次元で。コレクターの情熱もいりません、脳が発電装置となり培養される人間たち、生殖も不要ですな、映画「マトリックス」が現実になってきた。
案内状 10 × 14.8 cm