
聖母大聖堂

塚原健二郎 文 須田寿 絵 あかね書房世界絵文庫(36) 定価130円 地方定価135円 昭和27年3月20日発行、昭和28年8月20日再版 原著者表記なし「日本の作家の方々にわかりやすく書きあらためていただいたものです…… お父さま方、お母さま方も、可愛いお子さまのために、良い本をお選び下さることを希望してやみません。 あかね書房」
貧しい少年が画家になることを夢み、健気に生きるも不幸を重ね、クリスマスの夜に観たいと願ったルーベンスの絵の前で老犬・パトラッシュと共に亡くなる物語に、涙しましたね。史実をもとにした話と思ったが、英国出身の女性作家ウィーダが、同地に取材し1872年に出版した想像の児童文学だそうです。ガイド氏が「悲しい物語は、こちらの人は好きでないから」と不人気の訳を説明。日本人が「悲しい物語」に共感するのとは対照的。作者のウィーダ(1839〜1908)は発表時にはすでに上流階級のサロンに出入りする人気作家で、動物愛護協会設立に尽力する程の犬好き。晩年は多数の犬と暮らし、皮肉にも多額の飼育費が生活費を圧迫し住む家も失うなど困窮を極めという。尚、ウィーダの父はフランス人、母はフランス人、マリー・ルイーズ・ド・ラ・ラメー(Marie Louise de la Ramée)というのが本名だとウィキが紹介している。
山田五郎はフランダースの犬をパトラッシュを主人公とした物語と読めば、ハーピーエンドではないかと、解説している。



ルーベンス 『キリスト昇架』三連祭壇画

お話ではルーベンスが描いた三連祭壇画『キリスト降架』の下でネロとパトラッシュは亡くなった。
「えの すきな ネルロは、どうか して、いちど この えを みたいと おもいました。けれども、えには きれが かかって いて、おかねを はらわないと みる ことができません。」(15頁)
「パトラッシェ、ぼくは この やさしい 人が だれだか、ちゃんと しって いる。いっしょうけんめい べんきょうして、りっぱな えかきになって、この 人の こころに むくいなければ ならないんだ。」(38頁)
「いいえ、ぼくじゃ ないんです。パトラッシェです。ですから、どうか このいぬに たべものを やって、とめて ください。ぼくの いっしょうの おねがいです。」(49頁)
「おどうの おくの ほうに、ネルロが きを うしなって たおれて いました。そこは あのルーベンスの えの 下でした。」(54頁)
「きたの ほうの うみから ふいて くる かぜが、ひろい おどうの 中まで ふきこんで きました。ふたりは、つめたい ゆかの 上で、うとうとと ゆめのような たのしいきもちに なりました。」(54頁)
「ネルロの 目に、高い ところに かかって いる、キリストの 立って いるルーベンスの えが、はっきりと うつりました。それは さっき、ネルロが やみの 中で、えの 上にさがって いた ぬのを ひきさいて しまったのでした。」(55頁)
「ああ、わたしたちさえ ておちが なかったら、こんな てんさいの ある こどもを こごえじに させるような ことは なかったのに。」(58頁)
54-55頁


56-57頁

切り落とした手の詰まったチョコレート

ベルギー・チョコレートの店・ネロは聖母教会、ネロとパトラッシュのモニュメント前