『リスボン─都市と写真』

May 10, 2015 11:56 ─ 16:49

小杉憲之氏(左)と森岡誠氏

小杉憲之写真集『リスボン─都市と写真』(クレオ、2015.5.29刊) 26.3×19cm、120頁、ハードカバー

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京都駅八条口の新都ホテル(地階・八坂の間)で、シュルレアリスムの先輩、小杉憲之氏の写真集出版記念会が催された。小説家、歌人塚本青史氏(青は下が円)の祝辞の後、装丁家・倉本修氏のご発声で乾杯。そして、幾人かのスピーチ、みなさんが異口同音に小杉さんは「謎の人」と評しておれた。詩人にして哲学者、歌人にして写真家。出来上がった写真集を拝見し、並々ならぬ才能をお持ちの人と思った。以前、あるおでん屋さんで、写真と言葉の問題をお聞きしたが、これは氏ならではの解答の書となっている。わたしも、映像と言葉のせめぎ合う写真集を作りたいけど、この本のようにはいかないだろう(力の差がありすぎる)。冒頭の「リスボン、この街は海と砂漠の匂いがする。」から、物語の予感を秘めて、ぐくっと興味をそそる。18頁には次ぎの啓示「写真で「自己表現」する?  なんという思い上がりか。」

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8-9頁

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宴の後半には、マリオネット(湯浅隆、吉田剛士)のお二人によるポルトガルギターマンドリンの演奏。哀愁を帯びた音色に港街の夜が深まっていく。小杉さんの心憎い演出に酒場の灯りを見る思いだった。

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挨拶をされる小杉憲之氏
フェルナンド・ペソアについての知識はないが、写真集のいたるところにペソアの草稿の断片がしのばせてあって、このブログを書いている今も、ここにある日本語が、小杉さんによるものではなくて、ペソアの「断片」と思えてならない。でも小杉さんは、街の灯りを最終頁において観客を静かに家路に送り出してくれた。107頁に「写真は希望である。<存在>としての / 抽象と細部としての具象が / 時間の中にともに現前しているがゆえに / 希望である。」とある。急坂の路面電車、暗闇の中にある光は、なんとも美しい。
 この写真集は、映像のリズムと合致する直線を絶妙な位置に配して、言葉を言葉の呪縛から解放させている。重い日本の活字がリズムをもって目に入ったのは、初めての経験。ブックデザインを担当した加藤勝也のセンスが素晴らしい。沢山の才能によって、クレオから世に送り出された写真集『リスボン─都市と写真』に拍手したい。尚、本体価格2,500円(税別)となっている。

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近くのパブ・キッパーズケルシュに移動して二次会


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恒例の記念写真

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京都写真クラブからは、森岡誠、奥野政司、金井杜道、市川信也、小生の5名が参加させていただいた。小杉さんのさらなるご活躍、ご多幸を祈念させていただきたい。有難う、堪能させていただきました。