『マン・レイ── 開放的な写真』at フォト・エリゼ ローザンヌ

photo by Steven Manford

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 レマン湖畔(スイス)の美しい街ローザンヌの鉄道駅に隣接して建つフォト・エリゼでマン・レイの大規模な写真展『マン・レイ── 開放的な写真』が3月29日(金)に始まった(8月4日(日)迄)。

 昨年12月、ネットの新刊案内で同展カタログが紹介され、個人コレクションによる大規模なマン・レイの写真展開催とあったので予約を入れ情報を確認していたところ「謎のコレクションから200点あまり」とされたのが「EXE COLLECTION」によると知って驚いた。「エクセコレクション」といえば2002年から2003年にかけて日本国内5箇所(東京、浜松、山口、帯広、京都)を巡回した『マン・レイ』展で披露された日本の投資会社の持ち物ではありませんか(推測)。未見であればスイスまで出掛けねばと思っていたので、危うくセーフ。

 写真史家でマン・レイ写真の専門家スティーヴン・マンフォードが、会場風景をインスタグラムで紹介している(4月3日)。彼のPOSTを読んで、さらにびっくり、エントランスの真っ赤な壁面全体にちいさな文字で解説が書かれている。前段の仏語に続いて英語で、作品の貸し手、及び、関連出版物とマン・レイ・トラストの間で「和解」したとある。画像から読み取るのは細かすぎて出来ないが、該当するコレクションについて以下の3点が強調されている。

(1) 作家の財産から持ち出された。
(2) 作家の歿後に作成された。
(3) 印画紙の裏面にゴム印が押印されたものについても、歿後焼付ではマン・レイの美的、芸術的意図と一致しないものがあり、作家が生前一度も焼付に使用しなかったネガからの作成が含まれる。

 続いてマン・レイ・トラストの所有権、著作権について言及されている。原文と会場風景をマンフォード氏に許可をいただいたのでアップしておきたい。

manfordmanray
PHOTO ELYSÉE


THE EXE MAN RAY COLLECTION AT PHOTO ELYSÉE, LAUSANNE

THIS IS SURREALISM. WALL TEXT PUBLISHED AT THE EXHIBITION, AS SHOWN IN THE ABOVE INSTALLATION VIEW. SEE 2ND INSTALLATION VIEW IN THE PREVIOUS POSTING:

"The Man Ray 2015 Trust declares that exhibition of this Collection by Fondation Plateforme 10 and publication of an associated publication by Thames & Hudson are both authorized as part of a "quitclaim" settlement agreement between lenders of the Works and the Trust.

In the opinion of the Man Ray 2015 Trust: This settlement waives legitimate title and copyright claims upon this collection. The Collection consists of works that may have been, without authorization,

1) removed from the artist's estate,

2) created posthumously,

3) stamped; Some of the posthumous prints may be inconsistent with the aesthetic and artistic intent of Man Ray, and some are from negatives that Man Ray had never used for printing during his lifetime;

This exhibition and related publications do not affect, diminish, or invalidate the Man Ray 2015 Trust's title and copyright infringement actions against others.

It is specified that these possible actions by the Trust in no way concern Plateforme 10 and / or Thames & Hudson or its publishing partners."

photo by Steven Manford POST 674  

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 1987年にマン・レイの写真展を開催したエリゼ美術館がフォト・エリゼの前身で1985年設立(2020年10月〜2022年6月まで新館移転の為に休館)。コレクションの写真は10万点を超えるという。今回のマン・レイ展と平行してシンディー・シャーマンの写真展も開催されている。

 今展のプレスリリーフには、マン・レイの写真をどのように参照するかが重要で、プルーフを基本にオリジナル、コンタクト、ヴィンテージなどのプリントについて簡単な説明がされている。ここで、レイヨグラフを例に写真画像の再作成(Countertype)にも触れられるが「奥歯に何かが挟まっている」印象ですな。


 マン・レイ展のカタログが届いたら、改めて報告したい。

 

PHOTO ELYSEE Place de la Gare 17 CH-1003 Lausanne (グーグル・ストリートビューから引用、感謝申し上げます)

マン・レイとジュリエット

拙宅小展示中央のオリジナル写真(?)は、1991年3月8日〜4月14日の会期でパリのトリニ画廊で催された『マン・レイとジュリエット』展の案内状。

自室で毎日観ている写真は ── 遠来の客人が若き日にパチリしたマン・レイのお墓(10 年程前に頂戴した)。伝記作家のニール・ボールドウィンは「なんの飾りもない盾型のベニヤ板」のマン・レイの墓参りをした日を書き残してる。

「突然、ジュリエットは部屋の反対側にいる私を分厚い眼鏡ごしに見つめて、『マン・レイのお墓参りに行きましょうか?』と言った。…… ここ何年来、目の具合が悪いうえに、湿気のせいで背中も痛かったらしい。厚手のセーターを着こみ、カールした髪にスカーフを巻いて、用心深く優雅に舗道を歩くジュリエットはまるでネコのようだった。よく知っている建物(モジリアニのアトリエ、ジュリアン・アカデミー、ルフェーブル・フォワネの店、エズラ・パウンドのアパートなど)の近くにくると、私の肘を手でそっと押し、指さして教えてくれたが、それ以外はほとんど口をきかなかった」(ニール・ボールドウィンマン・レイ鈴木主税訳、草思社 1993年 325-326頁)

 客人によると「ルフェーブル・フォワネの店は、もう存在しないらしいが、1980年頃にはまだあったと記憶している」。

上生菓子 フリーチョイス

遠来の客人と和菓子でマン・レイ話。

左から上段: 春の水(ねりきり、こしあん) by 二条若狭屋、春霞(きんとん、こしあん)by 千本玉壽軒、桜だより(薯蕷羹、さくらあん)by 二条若狭屋。下段: しだれ桜(外郎、白こしあん)by 二条若狭屋、花筐(上用、こしあん)by 亀屋良長。

4月1日 嵐電など

先月は天気が悪く、花粉と黄砂の飛来もあって健康散歩は滞り気味。それでも、月平均5000歩越えのノルマは果たしました。健康第一です。今日から4月、新たな気持で「野を越え山越え谷越え」何処までも、前半1週間は幼い友人攻勢で、どうなりますか。

お花見パトロール-3 枝垂れ桜

3月 中京区 ◯ ◯ 公園
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24日 雨のち曇 12.8/7.5

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25日 雨 14.3/10.0

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26日 雨 13.3/10.4

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27日 雨のち晴 15.8/6.3

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28日 曇のち雨 16.5/4.2

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29日 雨のち晴 22.7/12.2

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30日 晴のち曇 23.4/10.5 

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31日

お天気情報は tenki.jp 「京都の過去の天気」によった。

戦前 四条烏丸交差点

9 × 14 cm

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四条通東側南北の建物は「モダン建築の京都」連載で紹介した。

左: 三井銀行京都支店(竣工1914年) → https://manrayist.hateblo.jp/entry/2021/12/16/060000

右: 三菱銀行京都支店(竣工1925年) → https://manrayist.hateblo.jp/entry/2022/01/29/060000

 

 市電先頭車は500形(515)のように見える。この形式は1924年から1928年にかけて40両製造された初の3扉大型ボギー車。515号は1925年田中車両製造。(wikiwandに詳しい)

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2024.1  旧三和銀行側から旧三井銀行を望むパチリ。イオニア式オーダーが「瘡蓋みたいに張り付いて」認められる。

三和銀行京都支店 柱頭

in『モダン建築の京都』展 2021.9.25-12.262021.10 三和銀行京都支店 柱頭
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  ブログ「モダン建築の京都」シリーズとしては、建物が現存しないので例外となるが、遺物が置かれている場所に意味があるのでお許し願いたい。四条烏丸西北角にあった三和銀行京都支店の「巨大なコンポジットオーダーの柱頭」である。2007年に解体され、同地に建てられたラクエのビルに2010年移転展示。三和銀行京都支店は1952年竣工: 大林組、設計: 三和銀行建築家。鉄骨鉄筋コンクリート造り、地上5階地下1階建て。「極私的建物探訪総合目次」のサイト・銀行建築の流れによると ── 

「この建物のオーダーはおそらく日本最大級で、建物4階分の高さがあるもの2本が正面玄関に鎮座していまます。内部に関してはそれまでの銀行建築に見られた豪華さ重厚さは全くなく、機能性が重視された簡素なものとなり、これまでの銀行の専売特許であった歴史様式意匠からは全く懸け離れたものです。外観に関しては、この建物が様式建築からの決別建築で、これを最後に銀行建築の意匠に歴史様式的なものは見られなくなり、簡素な意匠の建物へと移項していったのでした。私には『さよならの代わりに巨大なオーダーを置いておきます。しかもそれは最も美しく、造作に手間の掛かるコリント式です』と建物に言われているようです」とある。同行が東海銀行と合併しUFJ銀行となったのが2002年1月、バブル崩壊と両銀行の派閥抗争からの混乱で2005年1月に東京三菱銀行と合併し三菱東京UFJ銀行と変わって消滅。


LAQUE四条烏丸 / アーバンネット烏丸

LAQUE四条烏丸 から烏丸通東を望む、左に三井住友銀行京都支店、右に東京三菱UFJ銀行京都支店。

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下図は竣工当時の三和銀行京都支店、大林組70年略史( https://www.obayashi.co.jp/chronicle/70yrs/t3c4.html )から引用させていただいた。

[メモ] ウィキによると「オーダー」というのは「古典主義建築の基本単位となる円柱と梁の構成法で、独立円柱(礎盤、柱身、柱頭)と水平梁(エンタブラチュア)から成る。一般的にトスカナ式(英語版)、ドリス式、イオニア式、コリント式、コンポジット式(英語版)の5種類を指す」。→  オーダー (建築) - Wikipedia コンポジット式についても、解説あり。

[ときの忘れもの拙稿] 『小さなカタログ、見上げる建築』 『親しげなヴォーリズ建築』