マン・レイとジュリエット

拙宅小展示中央のオリジナル写真(?)は、1991年3月8日〜4月14日の会期でパリのトリニ画廊で催された『マン・レイとジュリエット』展の案内状。

自室で毎日観ている写真は ── 遠来の客人が若き日にパチリしたマン・レイのお墓(10 年程前に頂戴した)。伝記作家のニール・ボールドウィンは「なんの飾りもない盾型のベニヤ板」のマン・レイの墓参りをした日を書き残してる。

「突然、ジュリエットは部屋の反対側にいる私を分厚い眼鏡ごしに見つめて、『マン・レイのお墓参りに行きましょうか?』と言った。…… ここ何年来、目の具合が悪いうえに、湿気のせいで背中も痛かったらしい。厚手のセーターを着こみ、カールした髪にスカーフを巻いて、用心深く優雅に舗道を歩くジュリエットはまるでネコのようだった。よく知っている建物(モジリアニのアトリエ、ジュリアン・アカデミー、ルフェーブル・フォワネの店、エズラ・パウンドのアパートなど)の近くにくると、私の肘を手でそっと押し、指さして教えてくれたが、それ以外はほとんど口をきかなかった」(ニール・ボールドウィンマン・レイ鈴木主税訳、草思社 1993年 325-326頁)

 客人によると「ルフェーブル・フォワネの店は、もう存在しないらしいが、1980年頃にはまだあったと記憶している」。