ロット番号415『求積法』at クリスティーズ・パリ

日本時間の21時から始まったオークションは、写真のロットで盛り下がりテンポが悪い。マルチプルであってもオブジエは値を刻むが、油彩は相変わらず伸びません。小生が上掲の『求積法』を好むと既に書いたけど、人気の度合いはいかほどかとライヴ観戦しておりました。クリスティーズが付けた予想価格は15万〜25万ユーロ、マン・レイが最後まで手元に置いた重要作なのに注目はされていない様子、オークショナーも気落ちしているのでしょうね、結局19万ユーロでのハンマーとなりました。彼女のコケテッシュな叩き方には愛嬌あるんだけど…… 時刻は日付が変わって0時13分、セールはまだまだ続きました。

 わたしは、2018年にウィーンで本作を拝見した後、体験を拙著『マン・レイの油彩が巡る旅』(銀紙書房、2018年)に書いた。機械製図を彷彿させる「男の子の絵」で「画家の孤独」に繋がるところが小生の琴線に触れるのです。美術館の観客には額の裏面を知る機会はあたえられないが、オークションでは詳細な画像が提供される。「油彩が巡る旅」のチケットが幾枚も貼られているようで興奮した。

オークション出品作展示 at クリスティーズ・パリ

国際マン・レイ協会のインスタグラムにオークション出品作の展示風景が8点アップされていた。開催に先立ち4月3日〜11日(10時〜18時)の9日間、シャンゼリゼ通り近くのマティニヨン通り9番地にあるクリスティーズ・パリで凡そ200点が展示されたようである。日本国内でこれらを観ていた時とは、まったくちがう気持ちで訪ねるでしょうね(行ってみたい)。オークションが終わったので別の気持ちで画像を観ております(複雑)。上掲14点の成立価格(手数料込邦貨換算)は凡そ1億3,600万円、悶たところで意味なかった、ホント。


 もしも、可能であるならば上掲左端の油彩『求積法』(1938年)が欲しい。4,000万円なら廉価、バカですね。渋谷のBunkamuraで拝見したのは33年前でした。


 ある専門家がお薦めと言っていた上掲左から2点目のレイヨグラフも、諸般の事情から予想最低価格止まり ── それでも1,670万円。「観るだけでも楽しすぎる」というのが本心なのであります。

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 会場風景は国際マン・レイ協会のインスタグラムから引用させていただいた。記して感謝申し上げる。(尚、画像を一部訂正をしております)

マン・レイ写真暴落 at クリスティーズ・パリ

パリでのオークションをライブ観戦していたので今朝は寝不足(時差▲7時間)。『マン・レイ 私は謎だ。』(2004-2005)や『マン・レイと女性たち』(2021-2023)といった展覧会に作品を貸し出してきた国際マン・レイ協会のマリオン・メイエが自身のコレクションから凡そ200点を売りに出した。リタイアしたとはいえ気にかかり一ヶ月は他の仕事にかかれなかった。ロットの全貌を掴んだのが3月23日で、これまで現物を観てきたので記念にひとつは落としたいと検討をしておりました(円安で泣きながらですが)。そして電子カタログのダウンロード準備が4月4日に整った(最近は紙のカタログは発行されないようですね)。デッサンと手紙を狙うかと思案、すると、オークションハウスから写真作品11点の「出品取下げ」メールが入ってびっくり、確認すると電子カタログの利用はクローズとなっている。この経緯は推測になるので、ここでは書かないが「なるほど」と合点がいった。電子カタログは翌日、該当ロットを除き誌面(?)を変更して再開。

 「出品取下げ」は2点増え、13点、日本時間午後9時全180点でセール開始。ここでは、写真作品の落札結果についてメモする。最初はそれほど悪いと思わなかったが、写真があがるとオークショナーの進行が暗い、落札予想価格の50%に満たないものが続出、凡そ76ロットで最低予測をしたまわったもの52点と多数、平均106.64%(上限の74.31%)。レイヨグラフの作例も同じように悪い。後者でも9ロットで6点未達の平均77.98%(上限の49.70%)。輝かしい出品歴があるにもかかわらずである。 冷やかしで写真をビットしいたら良かったかも知れない(後の祭り)。

 写真の最高額は『アングルのヴァイオリン』の120,000ユーロ(1,990万円)、レイヨグラフは80,000ユーロ(1,326万円)だった。

撮り鉄 & 乗り鉄 「春の陣」-1 新快速 & 大阪環状線

西大路駅 関空特急「はるか」

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新大阪駅乗換 おおさか東線

大阪駅白浜行「くろしお」 クロハ288−2012他

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大阪環状線桜の宮駅 毛馬桜之宮公園 外回り

岸田良子展 at galerie16

「CAMERON」キャンバスに油彩 P80号 2024年
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「TARTANS」連作(2010年〜)の仕事を続けられている岸田良子さんの個展をgalerie16で拝見した(13日迄)。今年は特にカタログを制作されたので、どんな着想で作られたか関心を持った。良いですね、作品が葉書サイズのカードになって、手にした者も「自由なアプローチ」ができるようになっている。各回の案内状、画廊での作品配列にしたがって箱に入っている。彼女が連作の着想を得た「イギリスで刊行された図版集」の本歌取り、カードと箱の関係は1970年代から続くので懐かしく嬉しい。

左から「HEY」「LESLIE」キャンバスに油彩 P80号 2024年

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岸田さんが在廊されていたので、サインをお願いした。限定200部、ありがとうございます。

『マン・レイ── 開放的な写真』at フォト・エリゼ ローザンヌ

photo by Steven Manford

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 レマン湖畔(スイス)の美しい街ローザンヌの鉄道駅に隣接して建つフォト・エリゼでマン・レイの大規模な写真展『マン・レイ── 開放的な写真』が3月29日(金)に始まった(8月4日(日)迄)。

 昨年12月、ネットの新刊案内で同展カタログが紹介され、個人コレクションによる大規模なマン・レイの写真展開催とあったので予約を入れ情報を確認していたところ「謎のコレクションから200点あまり」とされたのが「EXE COLLECTION」によると知って驚いた。「エクセコレクション」といえば2002年から2003年にかけて日本国内5箇所(東京、浜松、山口、帯広、京都)を巡回した『マン・レイ』展で披露された日本の投資会社の持ち物ではありませんか(推測)。未見であればスイスまで出掛けねばと思っていたので、危うくセーフ。

 写真史家でマン・レイ写真の専門家スティーヴン・マンフォードが、会場風景をインスタグラムで紹介している(4月3日)。彼のPOSTを読んで、さらにびっくり、エントランスの真っ赤な壁面全体にちいさな文字で解説が書かれている。前段の仏語に続いて英語で、作品の貸し手、及び、関連出版物とマン・レイ・トラストの間で「和解」したとある。画像から読み取るのは細かすぎて出来ないが、該当するコレクションについて以下の3点が強調されている。

(1) 作家の財産から持ち出された。
(2) 作家の歿後に作成された。
(3) 印画紙の裏面にゴム印が押印されたものについても、歿後焼付ではマン・レイの美的、芸術的意図と一致しないものがあり、作家が生前一度も焼付に使用しなかったネガからの作成が含まれる。

 続いてマン・レイ・トラストの所有権、著作権について言及されている。原文と会場風景をマンフォード氏に許可をいただいたのでアップしておきたい。

manfordmanray
PHOTO ELYSÉE


THE EXE MAN RAY COLLECTION AT PHOTO ELYSÉE, LAUSANNE

THIS IS SURREALISM. WALL TEXT PUBLISHED AT THE EXHIBITION, AS SHOWN IN THE ABOVE INSTALLATION VIEW. SEE 2ND INSTALLATION VIEW IN THE PREVIOUS POSTING:

"The Man Ray 2015 Trust declares that exhibition of this Collection by Fondation Plateforme 10 and publication of an associated publication by Thames & Hudson are both authorized as part of a "quitclaim" settlement agreement between lenders of the Works and the Trust.

In the opinion of the Man Ray 2015 Trust: This settlement waives legitimate title and copyright claims upon this collection. The Collection consists of works that may have been, without authorization,

1) removed from the artist's estate,

2) created posthumously,

3) stamped; Some of the posthumous prints may be inconsistent with the aesthetic and artistic intent of Man Ray, and some are from negatives that Man Ray had never used for printing during his lifetime;

This exhibition and related publications do not affect, diminish, or invalidate the Man Ray 2015 Trust's title and copyright infringement actions against others.

It is specified that these possible actions by the Trust in no way concern Plateforme 10 and / or Thames & Hudson or its publishing partners."

photo by Steven Manford POST 674  

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 1987年にマン・レイの写真展を開催したエリゼ美術館がフォト・エリゼの前身で1985年設立(2020年10月〜2022年6月まで新館移転の為に休館)。コレクションの写真は10万点を超えるという。今回のマン・レイ展と平行してシンディー・シャーマンの写真展も開催されている。

 今展のプレスリリーフには、マン・レイの写真をどのように参照するかが重要で、プルーフを基本にオリジナル、コンタクト、ヴィンテージなどのプリントについて簡単な説明がされている。ここで、レイヨグラフを例に写真画像の再作成(Countertype)にも触れられるが「奥歯に何かが挟まっている」印象ですな。


 マン・レイ展のカタログが届いたら、改めて報告したい。

 

PHOTO ELYSEE Place de la Gare 17 CH-1003 Lausanne (グーグル・ストリートビューから引用、感謝申し上げます)