『チェコ・ブックデザインの実験場 1920s-1930s』展 at 京都国立近代美術館

 

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京都国立近代美術館の常設展示室(4F)でチェコアバンギャルド書籍等120点あまりを紹介する展覧会『チェコ・ブックデザインの実験場 1920-30年代』展が催されている(7月12日迄)。本展もコロナ禍の感染対策により、やっと観覧できるようになった経緯があり、当初の5月10日終了が延期されたので、ファンとしてはありがたい対応に感謝しているところである。

 

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 シュルレアリスム画家、トアイェン繋がりから関心を持ち始めたチェコの書籍だけど、国際都市パリ周辺で起こった多くのシュルレアリスム運動を、リアリティを持って現代の日本で体験させていただく、興奮に、酔いしれた。マン・レイの写真『涙』(1932)の、瞳の魅力を示すには、この位置以外に考えられない抜群のトリミングで表紙に使ったズデニェク・ロスマンの『パレットの上の熱情』(1935)の見事さはどうだろう、色をさしたビーズの美しさ、タイトルの「Vedro」との協調、好きであります。

 

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図72 212×130mm 110pp.

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 おおよそ作家毎に並べられた書籍の、展示ケースのお洒落な具合、足元のサイン、薄暗い壁面に投影されるチェコの人たちの肖像。時代の雰囲気、地政学的な位置取りの暗さにも光があたって、表紙や書籍の背表紙に見入ってしまった。この地の言語は理解できないけれど、美術館が用意した説明を手がかりに、内容にまで入りたい気持ち…… カレル・タイゲによるブルトンの『シュルレアリスムとは何か?』(1936)、ヨセフ・シーマによる『ナジャ』(1935)、それに、『マルドロールの歌』(1929)なども。

 

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図81 189×130mm 157pp.

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カレル・タイゲ編 『Red』全29号 1928-1929

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 今回の展示は、『チェコ・デザイン 100年の旅』展の関連企画であり、大阪中之島美術館所蔵品と聞く。本好き、資料好きにはこたえられない眼福の展示。パリからもプラハからも遠く離れた京都で、アバンギャルドの種が100年の後に花開く。ブックデザインが「反映する時代の雰囲気」。銀紙書房本は、なにを反映しようとしているのか、展覧会を観ると我が身にかえってきます。尚、展示リストの他に、西村祐一デザインによる44頁の冊子が用意される、お土産付きの好企画となっている。