イノダコーヒ本店

in『モダン建築の京都』展 2021.9.25-12.26

2021.12
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 イノダコーヒは猪田七郎が珈琲豆の焙煎・販売卸業として1940年創業、召集により休業したが復員し、残っていた機械と生豆を用い1947年開店。10坪のスペースだったが、本物の珈琲と空間・サービスを提供したことから多くの人に愛され、今日まで続いている。ただし建物は1999年の火事で半壊、翌年、忠実に再建された。近年みられる煉瓦造りの洋館にかさぶたの如く建物の一部だけを貼り付けた「ファサード保存」に比べ、気持ち良い状態となっている(感謝)。本稿ではメモリアル館をUPしたが、クラシックで落ち着く旧館、ガラス張りで吹き抜けが気持ち良い本館、二階と店内は広い。

 筆者は1973年頃から友人Hに誘われ仕事帰りに利用するようになった。ロールパンセットで小腹を満たし、呑み屋にくりだしたものである。最近は健康ライドの途中に寄り、アラビアの真珠を楽しみつつガーデン席で本を読んだり、原稿を書いたりと、肩のこらない時を過ごさせてもらっている。

 創業者の猪田七郎は家業の他、洋画家としても知られる(二科会会員)。1962年の欧米旅行で多くのヒントを得たと伝聞する。本店入り口に油彩『ノートルダム大聖堂』が掛けられているが、祇園祭の季節には長刀鉾と船鉾が巡行する『鉾』に取り替えられる。これを観るのも楽しい。

2016.12

[ときの忘れもの拙稿] 『小さなカタログ、見上げる建築』 『親しげなヴォーリズ建築』