南仏紀行-3 シベリア上空

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しばらくして、フライト・トレーディングを見ると(十六時四二分)シベリア上空の表示。高度一〇、六六八メートル、外気温マイナス五八度、飛行速度は時速八五七キロメートル。エコノミークラス症候群が恐いので、後方のトイレ・スペースをうろうろ。窓から地上を覗くと白い世界にくねくねと川の蛇行。地球の自転に逆らい西へ向かって飛んでいるので、ずっと昼間が続いている。(19頁)

 

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南仏紀行-2 関西国際空港

2006年3月4日(土)

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わたしは助手席に座り前方を見ている。夜明け前の街は暗く、信号の色が溶けている。しばらくすると京都タワーの辺りから東の空が淡い青色に変化し始めた。寒い朝である。(10頁)

 

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売店は小さくなったが、透明性と連続性の原理でもたらされた一・七キロの長大な吹き抜け空間はレンゾ・ピアノ設計。九万平方メートルの連続した屋根の下に、ガラス・フェンスと部材サイズのコントロールによって視覚を運んでいく演出。国際線出発階と到着階の間に、国内線を挟み込むサンドイッチ・コンセプトとなっている。パリのポンピドゥー・センターの設計で知られるこの人は、待合いのベンチにフランスの伝統色から選んだ赤、緑、黄、青、オレンジの配色を使い、軽快なアクセントをもたらしている。(13頁)

 

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飛行機は十時五〇分出発予定のオランダ、スキポール空港行きの八六八便だが大型のフライトボードには十一時十五分と変更表示されている。(12頁)

 

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お洒落じゃない配色だ。冴えた青じゃなく濁った青、色のバランスからイルカの顔に見えてしまった。機首に「Ferrara City」機体後方にオランダ国旗と「PH-BQF」の表示。垂直尾翼は白地に青で大きくKLMのロゴと王冠マーク。(14頁)

 

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腕時計で確認すると離陸は十一時三五分。機体が陸地を離れる瞬間の浮遊感は気持ち悪いが、不思議な快感でもあった。(14頁)

南仏紀行-1 『青い言葉と黒い文字』銀紙書房 2006年

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『青い言葉と黒い文字』銀紙書房 2006年 限定8部 箱入り上製本 21.5×14.7cm pp.178

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家人と欧州へ旅行したいと願っているが、コロナ禍終息の兆しがみえなく我慢の日々を過ごしている。幸い時間だけは十二分に持ち合わせているので、15年前に銀紙書房から上梓した南仏旅行記をベースに、本の段階で白黒図版としたものをカラーに戻し、ブラパチの旅を再現したいと思う。まずは、本の装丁など---

 

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上製本、コイン埋め込み装丁。

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 扉と最終頁の二点にカラー挿絵を用いる。当時のパソコン、容量不足でカラー出力に時間がかかるのに加え、頻繁にフリーズする有様で難儀した。

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 旅行日程に合わせ8章で構成。南仏カンヌ、ニース、アルルからロワール、モン・サン・ミッシェルを経てパリへ。同行者とは違い、小生、モンバルナス墓地でマン・レイの墓参りをするのが目的でした。

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まずは、2006年3月4日(土) 夜明け前の京都タワーから(10-11頁)

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 ブログ新シリーズ「南仏紀行」では、拙著『青い言葉と黒い文字』からの引用を中心に紹介したいと思う。お楽しみください。

ネットバブル

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クリスティーズのHPから引用

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 4月6日(火)にクリスティーズ・ニューヨークで写真のオークションが催された。アボット、スタインケン、マン・レイ、クライン、ブレッソンメイプルソープなどを含む全88ロット。このセールにはマン・レイの写真で一番有名な『アングルのヴアイオリン』が久方ぶりに出品されると云うのでウォッチしていた。予価で200,000〜300,000ドル。しかし、特別なイメージだとしても葉書サイズで1950年代のプリント。すでにマン・レイはオリジナルのネガを失っていたので複写したものをプリントし裏面に献辞を入れ、友人のダダイストであるハンス・リヒターにプレゼントしたもの、プロミナンスはチューリッヒ古書店を営み、書誌編集者、オークショニア、収集家として知られた故ハンス・ホリガー(わたしも、彼から一点購入している)、なので、成り行きが気にかかっていたのです。本作、ポンピドゥー・センター所蔵品や、ジャイコブスのコレクションと比較すると、印画自体の品質は「いまひとつ」のレベルと思うが、一応は作者生存中の品物、物議を醸すスタンプもないので、まあ、「あっても、良いか」と、わたしなどは判断するのだが(参戦は出来ませんな)。落札結果を確認して驚いた。なんと475,000ドル、6日の外国為替(1ドル 111.29円)からすると邦貨にして52,862,750円、これにクリステイーズの手数料、著作権者への還元、保険料、送料、消費税などを加えると8千万円ほどになるではありませんか。 これは、もう異常、わたしマン・レイのコレクター戦線から完全に撤退いたします。尚、オークションの落札総額は2,193,625ドル(邦貨換算2億4,400万円)、マン・レイを除けば平均落札価格は220万円、これでは、どうにもなりません(トホホ)。

『マン・レイとピカビア』展 at ヴィト・シュナーベル画廊

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画廊のHPから引用

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3月25日(木)から、ニューヨークのヴィト・シュナーベル画廊で『マン・レイとピカビア』展が催されている(5月15日(土)迄)。透明な時代を含むピカビア4点とカリフォルニアからパリに戻る時期・非抽象時代のマン・レイ5点からなる油彩で、両者による架空の対話を試みている。美術潮流に飲み込まれないままの自由な態度は、二人のキャリアによるものなのか、独創的な絵画展開に、新しい世代の鑑賞者は大いなる刺激を受けるだろう。−−−昨今、ニューヨークは遠いけど。マン・レイ作品については、日本に招来されたものも多い。簡単に紹介しておく--- (1)『構成』46×38.1cm 1954年、(2)『女性絵画』127×111cm 1954年---南天子画廊1973年、(3)『陸亀』50.7×61cm 1944年、(4)『非抽象』92×70cm 1947年---セゾン美術館1990年、(5)『テンペスト』45.8×61cm 1948年---伊勢丹美術館1983年、セゾン美術館1990年。

 画廊のプレスリリースには、「絵画が終焉を迎えようとしているにもかかわらず、繁栄し続けている先の時代へと続く橋を暗示しているかのようだ」とある。繁栄ですか、どんな繁栄なんでしょうか。オークションならば遺族に7%の還元なれど、亡くなってしまったマン・レイにもジュリエットにも、分配はされない、祝福もまた。

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 ニューヨーク クラークソン・ストリート43番地 (2019年6月) グーグルより引用。

桜見物

今年は、存分に楽しませて頂きました。

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3/10 高辻通河原町西入ル。 

春めき(足柄桜)--早咲きの桜で3月中旬から下旬にかけて咲く。一枝に付く花の数が多く花の色はやや紫がかった華やかなピンク、卒業生を送る桜のひとつ。

 

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3/23 嵐電北野線 宇多野〜鳴滝

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3/25 鴨川・団栗橋

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3/26 祇園・辰巳神社

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3/26 高瀬川

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3/27 天神川

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3/28 壬生寺・一夜天神堂

散る桜、のこる桜も、散る桜 (良寛)

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3/29 中京区

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3/31 京都国立近代美術館

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3/31 京セラ美術館

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4/2 壬生寺

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4/2 八木邸

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4/4 中京区

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諸般の事情から、夜桜見物はしないままに終わりました。

ベルリンに渡った二冊

銀紙書房の絵本シリーズ二冊「マン・レイのスタジオで」と「ジュリエットの贈り物」が、ヤン・スヴェヌングソンのHPで紹介されました。

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上掲したヤンのサイトから

1.「QUANTITY」→「IMAGES」→ 「Books/Catalogues」→ 2021「The Gify From Juliet Man Ray」or 2020「In the Studio of Man Ray」

2.「QUANTITY」→「TEXTS」→ 「TALK」スクロール 「Fabruary 3, 2021 - "Kyoto"」

 

"I am proud and profoundly touched. Teruo is not an artist himself. Nevertheless, he has let his life be guided by his dedication to what one artist did with his life."

有り難い言葉です(恥ずかしいので、原文のまま引用)。

大雄院

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妙心寺塔頭・大雄院を拝観した。同院は1603年創建、尾張藩と縁があり、大雄院建築は家康の後妻となったお亀の方が、家康より賜った伏見の屋敷を移築したもの。客殿の襖絵(稚松図・山水図・滝猿図・唐人物図など)は幕末の絵師(帝室技芸員第一号)、若き日の柴田是真による。保存状態が良く、楽しませていただいた。写真パチリが許されないので残念。

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襖絵プロジェクト--戦災で消失した明治皇居の広間・千種の間に、柴田是真が描いた天井の花の丸図を、現代の宮絵師・安川如風が襖絵として復元。

 

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禅宗の庭園に池があるのは珍しい。

森の京都QRトレイン

2021.3.20f:id:manrayist:20210321084647j:plainJR嵯峨野線丹波口駅 「WOODLAND KYOTO」ロゴ

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前日のニュースで、3月13日運行開始となったJRのラッピング電車が紹介されていたが、普通列車一編成のみで運行スケジュールは未定、お楽しみにとの事だったのですが--- なんと、入線してきたではありませんか。

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 クモハ223-6094

どこへ行きましょう at 坊城通四条下ル

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祇園梛神社

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 紹介が遅れてしまったが、元祇園梛神社の東側、坊城通を四条から下り嵐電の踏切を超えると、新選組発祥にまつわる舞台として知られる新徳寺(新徳禅寺・臨済宗永源寺派)に至る。1863年、江戸から浪士を率いて入洛した清河八郎が本堂で「尊皇攘夷」に投ぜよと大演説をし、これに反発した芹沢鴨近藤勇らが新たに浪士組(後の新選組)を結成したと云う。

 

 さて、健康散歩でカメラ片手にブラブラ見上げると、本堂の屋根は公家風の「照り起くり」で中腹はなだらかな山、左右に流れた両端がそりかえる構造になっている。そこに瓦猿が居るではありませんか、子授け・安産祈願の縁起もの。抱えている「桃」は子供を表しているとか。望遠モードでパチリ、パチリ----二ヶ月前の午後です、

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瓦猿

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新徳禅寺 2月13日(土)

四月になりました。

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お内裏様が右にお座りですな。今年は拙宅にもお客様がおみえになられ、甘酒なしの甘い物づくしとなりました。

 

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嵐電四条大宮から嵐山までは乗車24分、220円。1929年製造のモボ101形(106)が向かいます。もっとも、小生、黄砂警報に怯え渡月橋には、出掛けられない状況です。トホホ。

「写真の都」物語 30 ── 名古屋市美術館

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名古屋市美術館 2021.3.20

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 黒川紀章設計の名古屋市美は1988年4月開館。故郷に出来た新しい美術館なので当初から期待を持って活動を見守ってきた。竹葉丈さんの「名古屋のフォト・アヴァンギャルド」から始まり満州に迫った一連の展示、山田諭さんの「日本のシュルレアリスム」「戦後日本のリアリズム」「画家たちと戦争」といった三部作など、単館企画で重要な問題提起を投げかける展示を幾つも催されてきた。帰省の度に拝見し、企画の意図をお聞きし、勉強をさせていただいた。そして、今回の「『写真の都』物語」展である。これは、高校時代に写真に興味を持ち、写真による表現、自己認識に開眼した半生を振り返えさせていただいた貴重な体験となった。提供した作品・資料の返送をもって一段落するが、さらに、写真史のなかで、中部学生写真連盟の活動が評価され、あらたな、展覧会へとつながる予感と期待に包まれている。

 一方、同館では1991年と1996年の二回、マン・レイの展覧会を開催しており、わたしも協力させていただいている。特に後者は、「我が愛しのマン・レイ」と題してわたしのコレクションを紹介した展覧会で、カタログも制作させていただいた。美術館の図書室には、整理番号S12747として、このカタログが蔵書されている他、わたしが1999年に自作したマン・レイ油彩のカタログ・レゾネ『MAN RAY EQUATIONS(マン・レイ方程式)』(限定50部)も収められている。ティモシー・バウムとアンドリュー・ストラウスが準備を進める油彩レゾネは現時点では刊行されていないので、世界で最初の(それゆえに未熟な)レゾネが、名古屋市美にあることを、恥ずかしながら報告しておきたい(整理番号S14863)。

 

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「『写真の都』物語」展会場 2021.2.6→3.28

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『我が愛しのマン・レイ』1996年f:id:manrayist:20210322092756j:plain

『MAN RAY EQUATIONS』1999年 

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