マン・レイ忌 第45回

f:id:manrayist:20211109132224j:plain"Man Ray: The Artist and His Shadows" by Arthur Lubow 21.7×15.6cm pp.190

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 マン・レイが亡くなって45年、今年もマン・レイ人気の過熱ぶりは世界的傾向とにっている。各地(ブリュッセル、パリ、ニューヨーク、アヴィニヨン、東京、北京etc.)で展覧会が開かれ、研究書なども刊行されている。上掲したジャーナリスト、アーサー・ルボーによる本書は、「ユダヤ人叢書」の一冊であるためか、するどくマン・レイの出自に切り込んで興味深い。マン・レイ自身が『セルフポートレイト』で示した「謎」や、ニール・ボールドウィンの評伝にみられる「気配り」を取り除いた、距離感が新鮮で「芸術家とその影」が見事に描写されている。

  例えば、マン・レイの最晩年に、ジュリエットとアトリエ近くの「シェ・アレキサンドル」でランチをとった様子を、アルトゥーロ・シュワルツの逸話にからめ描写している。── 右手のバーを過ぎたところにあるいつものテーブルにつき、ラザニアかタルタルステーキを赤ワインと一緒に注文した。彼は習慣を重んじる人で、フローベールが唱えた有名な信条を守っていた。「ブルジョワのように規則正しく、整然とした生活をすることで、暴力的で独創的な作品を生み出すことができる」。その中で、彼の好奇心は多様性を見出した。ランチの時、ボウルから洋梨を選び、アルトゥーロ・シュワルツに「私が洋梨を好きなのは、洋梨には個性があり、同じ味の洋梨は2つとしてないからだ」と語った。

f:id:manrayist:20211110130152j:plain拙宅