『別名マン・レイ』展 at アングラドン美術館

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アヴィニヨン レピュブリック通り (グーグル・ストリートビューから引用)

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 南仏の観光都市・アヴィニヨンでマン・レイ展が開催されている(5月27日〜10月3日迄)。同地の裏通りにあるアングラドン美術館は18世紀に建てられた旧邸宅の中にあり、著名な服飾家ジャック・ドゥーセ(1853-1929)の相続人夫妻によって設立されたものである。ドゥーセは著名なファッション・デザイナーとして19世紀後半から20世紀初頭に活躍、華やかで贅沢でありながら気品を失うことのない製品は、当時の富裕層から支持され大人気となった。彼は印象派など最新の芸術傾向から刺激を受けたこともあり、自身で膨大なコレクションを形成した。

 シュルレアリスムの活動に資金援助をしたドゥーセは、ブルトンアラゴンを顧問に雇う。1922年7月10日にブルトンマン・レイを紹介したと云う。

 

 今回の展覧会は「マン・レイの書籍、素描、オブジェ、油彩を集めようとしたため、写真はわずかしか存在しない」と学芸員のローレン・ラズはテキスト「マン・レイとして知られている」で述べている。出品点数は57。版画集(?)では『回転ドア』『エレクトリシテイ』、書籍では『マン・レイ 写真 1920-1934 パリ』『自由な手』『ファッシール』『写真は芸術にあらず』、油彩では『終わりよければすべて良し』『壁』『赤い騎士』『詩人(ダビデ王)』など、版画も多い。

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アングラドン美術館 (グーグル・ストリートビューから引用) 

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会場画像は情報サイト「ドーフィン」から引用

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 アヴィニヨンは法王庁などの歴史的建造物も多く世界遺産に登録されている。ブルトンが訪れた様子は『ナジャ』で描写されているし、ローヌ川に架かる崩壊の後、放置したままのサン・ベネゼ橋は、マン・レイがエロティックな裸婦が横たわるデッサンで夢のように描かれている。わたしがこの地を観光したのは15年前の3月、レピュブリック通りのブログ上段画像左端の店、ブラッスリー・ル・シントラで昼食、美術館に行きたかったが月曜日でクローズ、近くの新刊書店フナックでマン・レイの写真集を一冊求めただけだった。当時の旅行記に「今は冬の季節、芽吹き前の街路樹はキュビスムの絵画だ。昼食の店に向かって石畳を歩く時の懐かしい感じは、石の硬度が身体の何処かに残っている記憶に繋がって安堵感をもたらすのだろう」とわたしは書いた。以下を参照してくれると嬉しい。