マルキ・ド・サドの旅から戻りました。

京都のラ・コスト村(?)を後に、緩やかな傾斜を戻ってまいりました。出発が年末の2日(土)でしたから、長い旅でした。


 サド研究に生涯を捧げたジルベール・レリーは『サド侯爵』(澁澤龍彦訳、筑摩書房、1970年)の終章で「二十八年間囚われの身でありながら『かって存在した最も自由な精神』たり得た人物は、かくて沈黙の夜のなかへ消えて行った。しかし、その破壊の力は永遠に消えまい」とし、サドから啓示を得た時間と場所を具体的に示している。

 

 一九四二年十一月二十日土曜日、午後三時頃、山上のラ・コスト村の幽霊のような人家のある地帯を通り過ぎて、サドの城の東側正面の下にたどりついたとき、ある未知な突然のショックが、私を白光のなかによろめかせた。--<略>−− 私はサド侯爵の心臓を見たのである。(317頁)

 

 わたしにとっても、不思議な旅でした。