2006.10.30-12.27 マン・レイになってしまった人

December 27, 2006

コンスタンティン・グルチッチによる空間デザインで見事に展示された木村伊兵衛のパリを、東京の友人が送ってくれたカタログとリーフレットと案内状で知った。

 銀座のメゾンドエルメス8階フォーラムが会場で、会期は来年の1月21日まで。

 友人の話ではインクジェット出力なのだが、なかなかきれいとの事。昔、のら社から刊行(1974年)された「パリ」を手許において、素朴な色合いの写真に魅せられているわたしとしては、ぜひとも拝見したい内容である。

 京都からでは、ちと遠い、もちろん、パリほどではないけど。


December 26, 2006

書店でHUGE---ヒュージ2月号(講談社)を買う。定価680円

 雑誌は立ち読みですませる事が多いのだが、この特集号「フォトグラファーを追え」は充実した内容で驚いた。先日、京都写真クラブ主催の平木収氏のレクチャーで、パリフォトの今年の様子をスライドで見せてもらっていたのだが、雑誌で大々的に紹介されているので、コレクターとして情報収集の必要を感じた訳。それに、知り合いのデイーラーへの言及もあるので、パラパラと読み始め、画廊や書店をネット検索で確認し始める。でも、この日記に書いて置かねば、マン・レイの競争相手はいないようなので(?)

「オープン初日、1時間にして買い手がついた」と云うリブレリ213のブースを写真で見ながら、3点程知らない写真集があるので気になってしまった。日本の物は購入してないけど、発売時点には手にしたからな、この場合はコレクション魂は揺さぶられないからね---

2007年は11月15日---18日の予定らしい、パリへ行きたいな、そして、ブースに出品できるような資料の作成も面白いなと、雑誌を見ながら夢はどこまでも拡がる

December 28, 2006

明日から、ギャラリー・マロニエを会場に「第7回京都写真展 風景に-1」が開催されます。午後、早退して搬入作業を行った。力ある25作家が3F・4F・5Fに出品する。展示の打ち合わせをしてから、昨年と同じ三階のスペースにセンター145cmで飾り付ける。今回のタイトルは、

マン・レイの謎、その時間と場所。」

 銀紙書房から刊行した同名書物の写真版、昨年は写真を展示したくなかったが、今回はベタベタの平凡写真。森岡パパ依頼のコメントには以下の文言を予定していた----

「私は謎だ。」と云う副題の付いた大規模なマン・レイ回顧展が、2003年6月から翌年1月の期間にわたって国内五会場(福井県立美術館、岡崎市美術博物館、埼玉県立美術館、山梨県立美術館、徳島県立美術館)で開催された。一般的な美術展と美術ファンとの関係は、作品に魅せられ感動するとしても、身を焦がすような悲しみまでには至らないと思う。わたしが苦しんだのは、作品が欲しかった為で、幾つかの油彩には悩まされた。好きな作品に囲まれた会場と、持ち帰れない葛藤との間でコレクター心理は揺れ動く。作品の「謎」を紐解く事で犯罪とは別の解決策を見つけたのだが、そんな五会場での「わたしとマン・レイ」を開陳させていただきたい。わたしの油彩は、今、何処にあるのだろうか?

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 これでは大袈裟だな、そんな訳で会場のタイトル・カードには、会場と会期だけを記載した。ぼつぼつと気長にやりましょう。

 19日(火)から24日(日) 
     12:00---20:00(最終日18:00)
 ギャラリー・マロニエ (わたしの作品は三階に展示)
 京都市中京区河原町四条上がる 東側
電話 075-221-0117

尚、レセプションパーテイは23日(土) 15:00--17:00

どうぞ宜しく、ご高覧願います。

December 17, 2006

名古屋に帰っていたので、楽しみにしていたギヤラリーマロニエでの「PHOTO PARTY」に参加出来なくて残念。昨年すごかったから、今年も楽しみたいと思っていたのだが----

 ここでは、名古屋の話題などを書いておきたい。帰名して名古屋画廊での宮脇晴・宮脇綾子展を覗き、ご主人の仕事に感心した。こうでなくっちゃな。次いで名古屋市美術館の「巴里憧憬 エコール・ド・パリと日本の画家たち」展を観る。気になった作品が沢山展示されていたが金子光晴のデッサンや展覧会資料に接したのは収穫だったし、フランスの空が描かれている中山巍「森の見える寺院」に特に惹かれた、そして、何故か最終コーナーに掛けられていた板倉鼎の「画家の像」が気になった。気になりながら地階の常設室に用意された「フランスに学んだ画家たち」でフランスの光にあってほっとした、鬼頭甕二郎の1925年の「風景」。地元の作家だがわたしは知らなかった。上の階では勉強だとか、文化の吸収とかいったニアンスが強くて、絵画を楽しむ側面が不足していた。描く喜びもあったはずだよなと、ここでも感じた。

 知人と昼食を一緒にして世間話を少々楽しんだ後、調べていた写真集専門の古書店を覗く。名古屋では初めてではないだろうか。ナディアパーク北側ビルの三階の一室が写真集で溢れている。マン・レイに関するものも幾冊かあった(残念ながら持っているものだが)。価格レンジは若干高いかと思うが、需要からするとしかたないだろう。あまり知られていないようなので、紹介しておきたい。

 本のセレクトショップ ワンオンワン
 中区栄3-13-1 南呉服町ビル3階
 電話 052-242-2363

 店主に尋ねると、初めて3年ほどだが、元々はコレクター、コレクター歴は20年との事。ほとんどの商品がビニール袋に入っていて、パラパラ内容を見て気に入ったものを求めるといった訳にいかないスタイルなので、客としては、つらい。内容を知っている雑誌を一冊、購入しただけとなった。次回は何か見付けたい。そんな、予感にあふれた店でもあった。

 この後、金山に出て、名古屋ボストン美術館の「ヨーロッパ肖像画とまなざし」を観る。圧倒されたのはティツィアーノ「本を持つ男の肖像」、ベラスケス工房「王女マリア・テレサ」、そしてゲインズ・バラ「エドマンド・モートン・プレイデル夫人」絵画のトリックこそ、視覚世界の総てだと思う、その延長でいけばセザンヌだけど、頭がつよいかな、マネの「ヴィクトリーヌ・ムーラン」を観た時、ウォホールの作品かと思った。古い絵画の方が絵画らしい、近代から現代にいたって、わたしたちは、なんと、とまどうまなざしとなってしまったのだろう。

December 12, 2006

四条御幸町のメンズ・ショップ「SHIPS」内に素敵な展示空間がある。京都写真クラブの森岡パパが展覧会「1976-1980 PARIS」を開いているので会社帰りに覗いてみた。氏の写真集から選ばれた写真だと思うが、実に雰囲気のあるパリの写真、セーヌ(?)に沈む椅子の様子なんて詩的で素晴らしい、モノクロ・プリントと会場の雰囲気が見事にマッチして、しばらく、立ち止まった。地下鉄のビル・アケム橋にしたって、この感じだよなと思った。京都の倉でパリか、スノッブではあるけど、展示ってこうしたものだよね。--展覧会は13日まで。

 その後、急いでHow are you, PHOTOGRAPHY? 展のギャラリー・マロニエを拝見。今年は4階が良かった。百々俊二の「黄昏・月光の海」、小池貴之「私たちは神がかり的なところに」、矢野隆「空泳ぐ」等、実力のある作家の仕事には、毎回、感心させられた。でも、このところのわたしが惹かれる表現は、ネコメイシの「何もないようでそこにある、幸せな大切な一日が」だと思う。

 写真をする事は、こうしたものだよな、来週のわたしの写真は、どうだろう、本人、自信がなくなってしまった。

December 10, 2006

年末のお掃除モードに入っているので、今日はお許しをいただけなくて、終日、食器棚の整理にかりだされてしまった。10時から4時まで、途中に昼食タイムはあったのだが、ハードな作業だった。全部、取りだし洗って拭いて乾かして収めて。割っちゃいけないし、神経も使う。

 それぞれの食器にまつわる思い出話をしながらの時間なので、楽しくもあるが、この作業、老人にはタイトだな。出来なくなったら、埃をかぶって生きていくのだろう、「遅延学」の開講がせまっている。

 銀紙書房新刊『青い言葉と黒い文字』の校正は一応終了。ページ割付の本番作業へ移行する段階となった。

December 9, 2006

京都写真展(*)に向けた作品を仕上げる。昨年は写真を出したくなかったが、今年はオーソドックスな組写真。ピタパネに貼ってから、製本テープで化粧をしたのだが、午後の一日、バド・パウエルビル・エバンスと聴く。でも洋物のジャズは合わない、選曲を替え、またしても、カルメン・マキの歌詞に涙しながらの、カット作業となった。この人の歌声と世界観に接すると、70年安保のあの時代を思い出して悲しくなるのだよね。「写真」を発表しようとするのは自己確認。来年はオシャレにやりたいけど、今年は、超ベタでやるか。観てくれる人の反応を楽しみにしよう。

 作品の搬入は18日の午後4時からですと、森岡パパからメールが入った。コメントの原稿も考えなくては---

* ギャラリー マロニエ 12月19日---24日
京都市中京区河原町四条上ル塩屋町332
電話 075-221-0117
尚、レセプションは23日 14:00---16:00


ecember 8, 2006

ネット・オークションのサイトを見ていたら、マン・レイのサインが入った展覧会のポスターが出品されていた。これはチェックしてビットしなくちゃと思ったのだが、どうもサインが怪しい、マン・レイの癖は残っているけど、「?」マークだなと思った。持っていないポスターならそれでもビットしてしまうけど、ここは我慢。シアトル在住の出品者は1960年代の展覧会としているけど、パリのアメリカン・センターでのこの展覧会は彼が亡くなくなった翌年の1977年5月に開催されたもの。「20-30年代の写真」に焦点をあてた展覧会だったと記憶する。

 ネット・オークションは面白いけど、それなりのリスクは発生する。分相応の小遣いで楽しく、こまめにマン・レイ資料を揃えていくのが一番。しだいに眼が肥えてきて、サインの心眼もついてくると思う----もっとも、亡くなる前に、展覧会が決まっていてサインをお願いしてあったと云う、事例の発生があるだろうが、自分の眼を信じなくっちゃ。


December 5, 2006

仕事が終わってから速攻で同時代ギャラリーに行った。今年の「How are you, PHOTOGRAPHY?」トップバッターの展覧会である。参加22名の作品をざっと拝見する。人気のスペースなので力の入った展示が目白押し。鈴鹿芳康氏や池田裕美氏など常連組の仕事には、毎回、うなってしまう、小部屋での木下憲治氏のシリーズには、テーマの深みと見せ方の妙を感じた。今回の展示では、宮本タズ子氏の「その夏白の存在」と竹田雅弘氏の「セルフポートレイト」に改めて関心させられた。わたしも頑張らなくては。

 写真は展示の仕方に左右されるよなと思いつつ、楽しく拝見させていただいたのは、松井みさき氏の「Vietnam Vitamin」。ベトナム・チックな木製額に写真が可愛く入っている。この感じなんだよな、写真を楽しむ事、見る事によって元気をもらうのって、彼女のキャプションにある「ビタミンカラー」の力だよな、有難う。
 
 新しい銀紙書房本の校正作業に追われているので、急いで帰宅した。自作品の準備をしなくてはいけないのだが----

 

December 3, 2006

朝から『青い言葉と黒い文字』の校正をやっている。一文字毎のチェックなので、腕のへんな筋肉を使ったようで、この時間になると右腕がおかしい。書籍の校正には原則を決めて、ページや前後の関係(文字の姿や空間のバランス)に惑わされなく作業しなくちゃいけないのだが、つい、字面の調子で直してしまう。それに、今回はフランスの話題なので地名等のカタカナ表記に悩まされる。記憶力が完全に無くなってしまった身には、つらい作業だ。

 最後には、気分転換で巻末に付ける「日本語文献」を打ち込み始めた。

 そんな訳で、京都写真展の作品を作ることが出来なくなってしまった。どちらも、素面でしなければならない作業。飲んだくれには、休日の昼間しか与えられていない----自業自得なんだけどね。

December 2, 2006 

12月に入ったので、我が家は年末掃除態勢。それで午前中に出掛け、京都文化博物館で開催中(明日まで)の『始皇帝と彩色兵馬俑』展を観る。前三世紀の考古遺物を堪能させていただいた。「やはり「楽士俑」と「跪射俑」にはうなった。それに「○○残欠」の二点、発掘し古の姿を復元する過程は、想像力が必要とされるんだろうな、紀元前のリアリテイ、韓国でも思ったが、海を渡ってくると色彩も形も薄まってしまうんだ。
 
 今日、明日の二日間、画材店画箋堂で二割引のバーゲンセール。店内はごつたがえし殺気立っている。レジで並んでいると、割り込む年輩客等に罵声といった状態。いやはや困った雰囲気だが、二割引は大きい。京都写真展の材料を多めに仕入れて帰宅した。

 わたしが出品する展覧会は、

京都写真展
処; ギャラリーマロニエ  京都河原町四条上がる、東側
              (電話 075-221-0117)
期間; 12月19日---24日 12:00--20:00 最終日は18:00
レセプションパーティは23日 15:00--17:00
 23日には、平木収氏の講演会とThe写真宴会 も予定されている。

 午後から、廊下と玄関回りの雑巾がけ、終わってからコーヒーを飲み、これを書いている。これからは毎週、掃除をおおせつかる。


October 30, 2006

表題の「みずのわ出版」新刊(編集; 林哲夫高橋輝次、北村知之)を拝読しながら、アンケートを出せばよかったなと反省している。黒木書店の事はみなさんが書かれるだろうと思ったのと、このところバタバタと忙しく、資料が直ぐに取り出せない状態だったので、そのままにしてしまっていた。でも、新刊を手にすると思い出す事が多いし、ここに書けば良かったと反省した。こんな気持ちにさせてくれた、林さん達編集者と柳原氏の熱意に感謝したい。
 
 黒木さんのところで最初に買ったのは、大島博光の『フランス近代誌の方向』(山雅房昭和16年)で、1973年9月だったと記憶する。そのころにいただいた名刺には、「文芸書、限定版、美術書専門」とあって、ご主人とご子息のお名前が連名で刷り込まれていた。

 ケースに入ったHOMMAGE A PAUL ELUARD、L'ECHANGE SURREALISTE、妖精の距離などを取り出してもらって、拝見したのが懐かしい。どの本も高価でわたしの財力では入手出来なかったが、指先に残った書物の感触がありがたい。
 
 ゆっくり捜せば、黒木書店の店舗写真なども撮ったので、手許にあるはずで、紹介できないのが残念である。そして、神戸のアバンギヤルド、海盤車刊行所の詩誌『エトアール・ド・メール』についてどなたか言及してくださったら、もっと良かったのだが、鳥居昌三氏亡きあとでは、これも、かなわぬ夢の出来事。

 ひさしぶりに、神戸の古書店めぐりをしてみたいと、思わせてくれた、一本に感謝。 ありがとう林さん。

Copyright (C)Teruo Ishihara, 2006