みそ煮込み

 1970年頃、錦通りにあった黒い空間のジャズ喫茶(アングラ喫茶といったジャンルかな)「グッドマン」を思い出しつつ名古屋市美術館の常設展示室3で岩田信市の油彩を観た。裸婦がなかなかいいなと、眼を進めると「ファイティング・ビューテイ(キック)」に気付き、感心。岩田さんは日本のピカビアだな。迫力があって面白い。12時に栄で古い友人と待ち合わせの予定があったので、「北斎」展の方は駆け足でざっと観る。月並みだけど「神奈川沖浪裏」「凱風快晴」これが、良い展示だった。和紙と版画の色模様にはうっとりするな。

 友人と山本屋総本家でみそ煮込。熱々の煮込が運ばれて来るまでの間に、彼が奥さんを撮った写真を拝見する。夫人は同じ写真仲間だったので、知っている人なのだが、対象との距離感が絶妙でまいった。原稿が一本書けるような濃密さだった。彼の写真であり、彼の時間なのだから、原稿は彼が書かなくちゃいけない。でも、影響を受けるな。個人史とともにある写真が、表舞台に出る偶然といったものが、作用するとよいのだが。その後、ワンオンワン・ブックスに寄って写真集を物色(オハイオ州立大学で開かれた「シュルレアリスム上演」と題した展覧会カタログを購入)。喫茶店に入って夕方までおしゃべり。10代後半に議論し形となった価値観を今でも共有しているのだな。

 上前津古書店へ行くと云う友人と別れ金山橋に移動、兄姉と合流。夜はいつもの一結いで食事。寒いので鯛ちり、白子焼き、熱燗をじっくり飲んで良い気持ち、しかし、最後に頼んだ牡蛎フライがお粗末で、あんぐり。いやな後味となってしまった。