ジョージ・ナカシマ


桂教会聖堂 1965年建立
知人のご母堂の告別式でカトリック桂教会へ行った。桂には独身時代の10年間住んだので懐かしく、教会の特徴的な外見については承知していたが、ミサに列席させていただいて、内部の温かさと光りに満ちた空間の魅力に、なるほどと設計者ジョージ・ナカシマ(1905-1990)と桂教会の人達の信仰の力に感服させられた。教会の説明書によると「菱形HPシェルの薄い屋根を、2枚の打ち放しRC壁がささえるシンプルな構造を持ち、大胆で斬新な和洋折衷の他に例を見ないデザインが特徴です。」とある。ナカシマは木工家具デザイナーとして知られ、同教会の家具調度も彼の手になるもので、天井の傾斜を考慮した民芸風意匠の行灯や、庭へと視線を誘う障子回りの処理など、日本的でありながらモダンな姿で、二つの国の文化を融合させた好ましい作例、成功した作例であると思った。わたしは知らなかったけど、ジョージ・ナカシマの仕事については、中嶋節子さんが詳しく解説をされている。
 お見送りをした後、独身時代に住んだアパートの方を歩いてみた。30年の月日が流れているが、ほとんど変わらずに建物があった。その大屋根の上に十字架はないけれど、わたしたちの肉体が召されていく天上界への通路は、ステンドグラスの光りに乗って続いていたり、古い写真の記憶にしたがって現れたりするだろう。光りは南側から来るとばかり思っていたけど、カトリック桂教会の穏やかな世界は、西山の峰に連なる光りであるのだろうな(合掌)。