題名は「一行エッセイ」---工藤哲巳


国立国際美術館
残念ながら昨日のレセプションには参加出来なかったが、今日から始まった『あなたの肖像---工藤哲巳回顧展』を観に国立国際美術館を訪問した。会場に入ると受付に「展示作品についてのおことわり」が大きく張り出されている。その内容は「展示作品の中には、お子様などには過度に刺激的と感じられる表現を含むものがあります。保護者および引率者の方のご判断により、ご鑑賞いただきますようお願いいたします。」とあって、続いて「工藤哲巳の作品は、人類の未来を考えるための模型です。ただし、ちょっと気味悪く、こわいと感じられる作品もあります。人体の一部(眼球、鼻、男性器)もしばしば登場します。初めてご覧になる方は、少しの覚悟と少しの勇気が必要かもしれません。しかし、ポップな色彩は、とて美しく、魅了されます。」と書かれている。そのまま進んで、地下3階の会場に入ると迎えてくれたのは、大作「インポ哲学」(No.022)、どこがインポだろうと近づくと、精子たちがニコニコ笑った顔で、手前の方は、しっかり受精卵に到着して黒く安泰といった表情、ヨーロッパ的な青い色面が控えて嬉しい作品となっている。晩年にはアルコール中毒で苦しんだ工藤であったが、彼の画業というか精神の軌跡をきちんと辿る画期的な展覧会となっている。わたしには鳥籠のシリーズが親しいけど執拗な男性器を使った表現には、男の子にとってのオチンチンが、他者を意識する最初の感覚である事に起因するように思えた。作品単体や図版などからの先入観が、今回の展示でパフオーマンスと繋がっているを知って、開かれた彼のメッセージと戦略に気がついた(素人はいけませんね)。
 どの作品がピカ一かといった観点ではなくて、どんなときでも、自分から逃れられないのだから「あなたの肖像」は、刻々と変化しながら、常に、どんな状況であっても、わたし自身だと---、でも,何度も会場を回ってマン・レイのアイロンとの関連じゃないけど、『アイロンをかけられたペニス』(No.073)なんて、作品の材質は「綿、プラスティク、水彩」だけど、繋がる壁面に掛けられたハプニングの状況(アイロンを掛ける弘子夫人)と照応してピンクの色目がよろしい。ケルンの美術館を会場に1970年11月8日の午後5時から行われたハプニング「INSTANT SPERM / SOUVENIR OF MOULT」って、どんなふうに圧着されたのかしら、しぼんじゃう感じもエロテックだろうね。
 展示場の最終は写真家・安齊重男氏が捉えた1981年の工藤哲巳のポートレイト、わたしが工藤さんと話しをしたのは1983年の秋だった。「工藤作品を前にした、マン・レイの反応はどうだったのか」と質問すればよかったな---でも、それは失礼な態度だろうな。今展では地下2階に用意された案内状やカタログやポスターといった資料展示にも興味を持った。それに工藤のカタログ・レゾネも兼ねた大判640頁あまりのカタログは、存在を主張して重要。多角的に工藤の仕事に迫った担当学芸員の力量に敬意を表したい。

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靫公園

安田ビル 大阪市西区京町堀1-8-31(Port Gallery T は一階です。)
その後、靫公園に移動して『映像試論100』を編集・発行されている天野多佳子さんの画廊、Port Gallery Tを訪ねる。同誌では松岡佳世さん、木水千里さんの二人が、マン・レイへ言及された論考を発表されているのでこのブログでも紹介させていただいた。関西を中心としたさまざまな書き手が、自由に発表されていて風通しの良さに好感のもてる冊子で、今後の展開が期待される。
 画廊では京都在住の写真家・藪本絹美さんの個展『風景を知る』が開催されていた。不思議な距離感を持ったモノクロ・プリントで、黒の側でも白の側でも意図的な過剰性を持たせているように感じた。印画紙のグラデーションを、ちょっとズラすようなこの感覚は、今の時代なのかしら。赤ワインをいただいたためか饒舌になりすぎたと反省。

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写真家 藪本絹美

藪本絹美展「風景を知る」at Port Gallery T

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若い友人のお誘いで「かごの屋」で夕食。初体験でしたが美味しゅう御座いました。帰りの阪急電車ではウツラウツラ、三連休初日も終わります(満足)。

握り寿司膳

小さなマロンパフェ