南仏紀行-28 フェルー街

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わたし達はサン・シュルピス教会のある界隈へ到着した。マン・レイが一九五一年にカリフォルニアから戻り、亡くなる迄の二四年間を過ごした最後のアトリエは、教会を越したフェルー 街にある。(137頁)

 

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 マン・レイの未亡人ジュリエットが健在だった一九八二年六月、彼女に誘われアトリエを訪問した。(138頁)

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今、目の前にあるアトリエの扉は黒く塗られ、真鍮の真新しいドアノブが取り付けられている。右の壁には暗唱番号を打ち込むキーがあって、カバーには「ROSWITHA」と黒い文字。右の壁には青ベタ白ヌキで「2bis」の表示。その色は攻撃的でわたしが旅行中に求め始めた深みとは異質のものである。(139頁)

 

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ガレージの扉越しに見上げるアトリエの窓、隣家との境界部分にも手入れがしてある。アトリエの前に立ち、幾枚もの記念写真を撮る。(139頁)

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ジュリエットが一九九一年に亡くなるとアトリエにあったマン・レイの品々は競売に掛けられ世界中の様々な場所へ散らばってしまった。(138頁)

 

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この場所を描いたマン・レイの有名な油彩の構図で写真を撮りたいと思ったが我慢する。謎を載せた荷車を引っぱりアトリエに戻ってくる人物が必要だからな。扉の右側には単車が停められているが、前回には駐車する車が通りをふさいでいて、油彩とは隔たった光景だった、あの時にあったのはヤーンの単車だった。(140頁)