朝鮮綴のあやうい光


赤地丸窓絵に琴棋書画図(部分)

赤地五羽鶴に鵲と鳳凰図(部分)
京都芸術センター2階の大広間に沢山の「毛綴織」が飾られている(朝鮮王朝の美<毛綴織>展 23日まで)。祇園祭の懸装品として用いられた渡来染織品で、16世紀から19世紀に朝鮮で織られたものと云う。現在の朝鮮半島ではこうした毛織物は製作されておらず、海を渡って祇園会や京都近郊都市の祭礼などに残された品物として貴重である。数百年間の光や湿気に耐えた、消え入る色彩の美しさは、郷愁以上の魅力をたたえている。靴を脱いで広間に入った時、古人の息遣いが聞こえると思うほどの、凜とした空間となっていた。山や鉾を飾る懸装品は18世紀以降「真赤で外光に映える印度絨毯」が重宝されるようになり、朝鮮からの「毛綴織」は、主役の座を引き渡し「祇園会客座敷の室礼道具」として、祇園祭の区域では口頭で「朝鮮綴」と伝授されて今に至ったと云う(都人の底力、残されているのがすごいですね、感動します)。展示品は吉田孝次郎氏のコレクションで、お手元には60枚ほど集まっているそうで、今回はその一部を披露されている。尚、20日(月)午後6時30分から8時の予定で講演会が開かれる。----このテキストでは吉田氏の論考「祇園祭、山・鉾を飾る懸装品--舶来染織品を中心として」を参考にさせていただいた。有難うございます。


掛けられているのは京都・薄田家伝来品(吉田氏が恩師からいただいたコレクションスタートの品とお聞きした)