「これからの写真」展


愛知県美術館 (愛知芸術文化センター10階)

「これからの写真」展入り口
鷹野隆大の写真展示(猥褻物陳列通報)で話題となっている「これからの写真」展(愛知県美術館、会期は9月28日迄)を拝見した。「光源はいくつもある」とする副題が示すように、展示構成は現代写真の様々な方向性を検証、展示する好企画で、デジタル時代への問題提起を行っている。担当学芸員の中村史子はカタログに執筆した「写真の多義性をめぐって」の中で、「アナログとデジタル、芸術写真とコンテンポラリーアート」を対比させ、紙の上から離れていった写真の持つ意味を考えさせてくれている。彼女が「光は希望や知の象徴である」と言ってくれているので、古い考え方に支配されているわたしも安心しながら会場を周った。

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 鷹野の「おれと(with me)」の作品が展示されるスペースの入り口は黒幕で覆われ、鑑賞時の注意事項(不快感への配慮、中学生以下のみの入室規制、引率の大人による展示内容理解など)が立て札に書かれている。入室すると天井までのビックサイズ写真と、額装、あるいは、アクリルケースに並べた小品が展示されている。問題とされたのは「with KJ#2」(タイプCプリント 2007年)が中心のようで、胸より下の部分が布で覆われている。男性器が写っていたはずだが、近づいて覗くも確認は出来なかった。その他の額装された写真で問題とされたものにも薄い紙(空調で揺れたりします)が被せられ、アクリルケース内の写真に被せた紙は、綺麗な皺が意図的に施されている印象。どれもが、インスタレーション化されて、作者の当初の意図がどこにあったのか判らなくなっている。見ると、どの写真も美しい。
 ところで、男性器の展示が歪曲された会場で、女性器の方はどうどうと確認できた。----「with JW#2」(タイプCプリント 2009年)。中腰で、しばらく観ていたら、こちらの方も空調で揺れ、目眩したのかと思った。鷹野とモデルが並んでおさまった写真のピントは、目に合わせられているのよね、男性器の権利復権を願う。アンドレ・ブルトンならば「謎」がないとエロティシズムは成立しないと言うだろうが、ある種状態の男性器写真が、公衆の前に出て来るのは何時の事だろう。

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作家の鈴木崇は中村史子のインタビューに「僕はイメージが真実かどうかよりも、光の作用とそれが生み出すイメージ、そしてその知覚の関わりに関心があるのです。」と答えている。


鈴木崇

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加納俊輔

田村友一朗

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鑑賞ガイドを手に取ると、各写真家のコメント表題に「写真は○○ではない。」と否定形が使われている。気持ちはよく判るのだけど、どこへ行くのだろうか。会場は作家毎に区切られ、個展の様子も見受けられる。その壁面に「この作品は撮影可能です。」と表記している、若い写真家たちの、これからを期待したい。