小林美香 トークショー

5月7日 ー11:30-13:00


辰巳大明神 Sferaまで徒歩3分

Sfera

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小林美香氏によるトークショー祇園縄手のお洒落なビル、スフェラで催された。京都国際写真祭でSIGMAが集めた写真集を無料公開する企画(Sfera Exhibition LOVE Photobook Library from SIGMA Collection)については先日紹介させていただいたが、ときの忘れもののブログで連載された『母さん目線の写真史』や現在連載中の『写真集と絵本のブックレビュー』などで、親しく触れている彼女のエッセイ、鋭い視点、興味の広がりに関心を持っていたところ、地元京都で「写真集を読み解く独自の」お話が聞けるとあって、出掛けた。

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 「写真集で写真を観る楽しさ」を語る彼女の立ち位置は、インターネットの普及で「すぐに、どこででも」観れるようになったイメージの世界との対極で、「もの」である写真集の「力」を改めて感じさせてくれるものだった。そして、「写真集の価値」をモニターに表示して次の様に示してくれた。(1)速報性には適していないこと、(2)内容が「わかりやすい」ものだけではないこと、(3)かさばること、(4)経年変化すること。あるいは次の視点(1)時間をかけて理解するものであること、(2)パーソナルな語り口に根ざすこと、(3)財産になること、(4)歴史を紡ぐものになること。


ロバート・フランクの初版から最新刊までの幾つかのバージョン

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 トークショーでは、SIGMAのコレクションから、5つのテーマ((1)古典的写真集の再版(リプリント)/改訂版、(2)「乗客」への眼差し、(3) 光の遠近、(4) 木を見る、(5) 写真・図像の蒐集)に沿って、それぞれ5、6冊の写真集が紹介された。最初のテーブルに置かれた5冊は古典的写真集で、ロバート・フランクアメリカ人』、ブラッサイ『夜のパリ』、ブレッソン『決定的瞬間』、クーデルカ『ロマ』、ウオーカー・エハゼンス『アメリカン・フォトグラフイス』といった名作の再版や改訂版。オリジナルを架蔵していたり、友人のところで手にしてきた者としては、あまりに高価になってしまった市場を考えると致し方ないとはいえ再版や改訂版の「もの」としてのたたずまいが気にかかるが、「作品は観る人がその生命を繋いでいく」と云った指摘に新鮮なものを感じた。小林氏は夏目漱石の文学と比較して、ロバート・フランクの『アメリカ人』を古典としてあげていた、これも新鮮。わたしの追い求めるマン・レイも「古典的写真集」の世界、現代へとつなげる為には、もっと、小林氏の真摯な指摘を受け止めなくてはならないと思った。

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参加者は実際に写真集を手にとって---