『腕木通信』巻一 りいぶる・とふん

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腕木通信 徳正寺五百五十年史研究 29.7×17cm pp.68 

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不思議なつながりから徳正寺の記録に興味を持った。発行と編集は井上迅、十八代住職釋源祐、書容構成に扉野良人。『腕木通信』は百年前の「活版印刷による由緒記」に印された徳正寺の歴史を、さらに「くずし字で書かれた由緒」の側と以降現在までにつなげ、五百五十年にわたってわたしたちにもたらす、事業の様子を拝見できる喜びにある。境内の御遺骨堂には「仏舎利、祖師親鸞聖人、蓮如上人、教如上人の御遺骨が奉安されている」そうで、同寺は浄土真宗本願寺派第八世宗主蓮如上人に帰依し廟堂を守った井上筑前守遠仲と上人とのつながりが起源となっている。東山知恩院近くにあった大谷道場(大谷廟堂)から起こり二条猪熊通りに創建され、二条城築城に伴い現在地の四条富小路下ルに移築(1601年)されたと云う。編集後記によるとシロアリ駆除対策で土蔵二階の法宝物を移動されたのが、歴史に分け入るきっかけ「ここに手をつけるとライフワークをもう一つ、いやあと二つくらい増やすような気がして、いちど開けたら引き返すことが出来なくなる予感が、この場所から家人を遠ざけていた。」と井上迅は書いている。江戸期の文化人たちと交流した同寺は、わたしたちの時代においても画家・秋野不矩、陶芸家・秋野等のお宅として、藤森照信による高床式茶室「矩庵」の姿に心ときめく場所となっている。文筆家で装丁家で僧侶で、雑誌の編集にも関わる当代一の才能が、どのような歴史と環境、血の流れによって育まれてきたのか、尾形光琳なども訪れたと云う同寺で貴重なお話を聞けた一時だった。

 尚、『腕木通信』は、11月23日発行、初版700部、定価1,500円(税込)。

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高床式茶室「矩庵」

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今年は、『正信偈』を手にする事が多いので、不思議なんですよ。