写真を使う現代美術家の三宅章介さんから案内状を頂戴したのに、マン・レイ展のカタログ校正に忙殺され見逃してしまった表題の展覧会は、阪神電車御影駅近くのSpace31で開催された(12月8日〜21日)。三宅の写真と詩人たち(小笠原鳥類、菊石朋、京谷裕彰、山本紗由里)の言葉をAIに読み込ませ、生成させた画像の展示。会場の写真を拝見すると、三宅の『切妻屋根の痕跡のための類型学』『逃げ去ってしまったイメージ』の写真と生成画像の間に「詩」を示し、見事な問題提起となっている。シュルレアリストが客観的偶然に込めた「精神の解放」が、100年を経てAIでもたらされる。関連性が判るものと、そうでないものが混在する不思議な画像を見ながら、シュルレアリスムの画家は淘汰されると思った。写真が画家の仕事を奪った再来である。
 ある批評家は、19世紀の産業革命のように、AIによる大規模な心の革命が始まっていると論じている。肉体の意味はなくなり、エネルギーだけが、ぼんやり浮かんでいる感覚だろうか。すべてをありのままに再現した写真幻想が取り外され、観たいように現実を認識する脳科学が、AIを介し心を支配していくのですな。展示を観ておくべきだったと悔やんでいる。
● 2024年回顧(展覧会』

今年は前年から続いた京都文化博物館での『シュルレアリスムと日本』(〜2月4日)『シュルレアリスムと京都』(〜2月18日)展、および、羊歯齋文庫特設会場での『アンドレ・ブルトンとピエール・モリニエ ★もうひとつのシュルレアリスム史』(〜5月8日)★展 で、アンドレ・ブルトンが『シュルレアリスム宣言』を発表して100周年を祝う催しに接することができた。パリを始め世界中での祝祭と思うが、小生としては青春そのものだから嬉しく興奮する反面、宣言100周年を祝う発想自体に違和感を覚えるので、躊躇の思いが強い。
2024年に拝見した他の展覧会も示しておきたい。
キュビスム展 京都市京セラ美術館 3月20日〜7月7日 ★
岸田良子展 ギャラリー16 4月2日〜13日 ★
キュビスム展 チェコ装飾美術館 2023年10月19日〜9月22日 ★
デ・キリコ展 神戸市立博物館 9月14日〜12月8日 ★
杉浦正和写真展『NEW YORK 1993』京都写真館 10月1日〜13日 ★